梅田望夫氏と平野啓一郎氏の「ウェブ人間論」を読んだ。
対談の形式を取りながらも、平野氏が自らの考えや質問を投げ掛け、梅田氏がそれに分かりやすく答えていく、そういった構成になっていて、平野氏のネットに対するペシミスティックな意見に対し、オプティミスト梅田氏が柔らかな物腰で応対する、それが繰り返される。
googleは神だと言い放ったウェブ進化論に比べると梅田氏の論調がごくフツーである。特に本書の93ページから100ページが象徴的。あの梅田氏が「たかがネット」と、ネットがもたらすリアル社会への影響を限定的なものとして語っているのだ。私はこの意見に頷いた。私が頷くくらいだから、フツーなのだ。
そういった意味で、衝撃的だったウェブ進化論に比べると刺激は少なく、肩透かし感があったことは否めないが、私たちの目線と変わりない立ち位置でウェブをフツーに語ることもできる柔軟な姿勢に、梅田氏のコンサルタントとしての一面を見たような気がする。進化論で放った毒を、人間論で巧みに中和した、そんな一冊だ。
それにしても2ちゃんが例示として挙げられることの多いこと。それだけウェブにおけるネガティブの象徴なのだろうが、私は嫌いなメディアではない。仲良しこよしごっこで、こそばゆいSNSよりは、よりリアルで、良いも悪いも人間味あふれるメディアだと思うのだが。