『ポゼッション』を鑑賞しました。
4Kリマスター版Blu-rayを購入。
通販の送料を無料にするための数合わせの映画を探していたときに円盤化されているのを発見し、これ一枚で送料はチャラになるのでもはや数合わせの「キンドレッド」は不要なのだけれど、「そんな小賢しい計算など知ったことか―! 見つけた以上買うしかないやろー! ヌルヌルした怪物が見たいんじゃー!」と激昂し、気付いたら諸々カートに入れて決済していました。
昔、一度観たのですが、そのときはよく理解できず、でも圧倒され、それ以来、ずっと再鑑賞したいと思っていた映画でした。
『ポゼッション(原題:Possession)』は1981年の映画。
紛らわしいことに、2012年の映画で、『ポゼッション(原題:The Possession)』という作品があります。
こちらはレンタルで鑑賞したのですが(探していた方の『ポゼッション』と勘違いした)、ディスクに傷がついていたため、クライマックスで視聴不能となり激昂した思い出。
「激昂してばかりだな」
「面目ない」
「ポゼッション」とは、「所有」「支配」という意味で、そこから転じて「憑依」を指す場合もあります。
本作は一応、ホラー映画に分類されています。でも、枠に収まり切っていない感じ。
監督・脚本:アンジェイ・ズラウスキー
出演:サム・ニール、イザベル・アジャーニ
製作国:フランスと西ドイツの合作
公開:1981年(フランス)、1988年(日本)
ストーリー:
西ベルリン郊外。
夫マルク(サム・ニール)が単身赴任から帰宅すると、妻アンナ(イザベル・アジャーニ)の様子がおかしい。妻は浮気を認め、家を出ていくが、幼い息子ボブの世話をするために家に出入りするようになる。
やがて浮気相手であるハインリッヒの存在が明らかになったものの、彼もまたアンナの所在を捜していた。
〝第三の男〟の影を感じたマルクは、探偵を雇ってアンナを尾行させる。
探偵はアンナの借りたアパートを突き止め、管理会社の人間を装って室内を調査する。そこにいたのは、人間ではない異形の存在であった……。
要約すると、人外に妻を寝取られた夫の話です。
正真正銘、「美女とヌルヌルした怪物が絡み合う映画」です。はい。
「エロ目当て?」
「否定はしない」キッパリ
エロティシズムもありますが、それだけではなく、女優の狂気の演技や、不安をあおる抜群のカメラワークに圧倒される快感が味わえるのが、この映画の魅力です。
解説や考察を読むと、監督が自らの離婚経験を映画として昇華した作品であるらしく、実体験で感じた怒りや不条理感を詰め込んだ「私情映画」なのだそうな。このことは監督自身が認めているとのこと。
夫婦間、男女間における齟齬と衝突が描かれているわけですが、その元凶となっている異形の怪物が何であるかは、まったく説明されません。
正体は? 目的は? アンナはいつどこで怪物と出会ったのか?
おそらく何かのメタファーなのでしょうが、私にはよくわかりませんでした。難しいことは各自で考えてください。
ヌルヌルした怪物が、烏賊のような姿から、だんだんと人間の姿に変化していく過程が怖かったです。
初登場のときは、画面に何が映っているのか本当にわからなかったのが、映るたびに見分けがつくパーツが増えていく恐怖。
4Kリマスターになったことで画像が鮮明になり、以前に観たときにはわからなかったことも判明しました。そんなところに「目」が付いていたんかい! 瞬きすんな! 怖っ!
「やっと完成したわ」
嬉々として最終形態となった怪物を紹介するアンナの笑顔、怖っ!
その最終形態がこれまた――(ネタバレにつき自粛)。
ひとりの女性を肉欲の虜にして精神崩壊させる怪物も怖いのですが、怪物の他に恐怖を感じさせられた人物がひとり、います。
浮気相手であるハインリッヒの母親です。
マルクに電話をかけてきて、
「アンナがしばらく来ていないのよ。せっかくシーツを洗ったのに」
なんて言うんですよ。
啞然としたマルクは、当然の疑問として、
「僕が誰だかわかってます?」
「ええ」
この母親、アタマおかしいんじゃねーの? ってなりました。
ハインリッヒという男、独身ではなく、妻子がおり、アンナとも関係を持っている。
母親は嫁もアンナも好きだと言う。
「だって、どっちも息子を愛してくれるから」
こういう歪んだ愛情が、人の心を支配し、憑依し、狂わせていくのかな、なんて、恐怖がヒタヒタと心に忍び寄るのを感じながら思いました。
『ポゼッション』――実に奥深いタイトルですな。
