あり得ない場所で、あり得ない方が、あり得ない状態でいるのをみると、やはり部数の力というものを感じざるを得ない今日この頃である。



それにしてもこんなに毎週きちんとドラマをチェックすることもめずらしい。といってもちょっとまえに「結婚できない男」が非常にいたたまれず、途中から最終回まではほぼ欠かさずみていた。のだめについてはほぼ完璧にフォローできそうだ。あと何回残っているんだろう。

それにしてもこの物語を読んでいると、音大生の現実の姿がまざまざと見せつけられていて、正直ちょっと切ない。はっきりいって夢が見られるのは18歳までだ。大学に入った瞬間に自分の才能について深く洞察しなければならず、実家が大金持ちか花嫁修業で音大に通っているお方をのぞき、自らの行く末が実はどん詰まりの可能性があることに否応なく気づかされるのである。これはつらい。だって彼らはたいてい、それまでは神童として扱われていたのだから。

前にも書いたが、どういうわけか私の周りには音楽家(あるいは音楽科)をやめて医者になった人が何人もいる。彼らの気持ちは正直わかる。みなすばらしい才能を持っているが、それだけであの「カタギでない世界」に残ることはできないのだ。問題は技術ではない。自分の時間をそこにかけていいかと言うことだ。何時間も、何ヶ月も時間をかけたものが、たった5分で終わってしまうむなしさを感じたことはないだろうか。それを感じずにすむように次から次へと仕事を入れられる人のみが、この業界では生き残れるのだ。

皮肉ではなく、頭のいい人はこの業界に残らない。それは仕方のないことだし、そうあるべきなのだろう。

ただやはり、創意をもって芸事をするのは人間だけなのだから(証明はできないが)、芸事をする人は一番人間らしいのかもしれない。