世界一うまいギタリスト,マヌエル・バルエコのドキュメンタリーフィルムが発売された.

現代ギター社から購入したが,すでに売り切れたのか.検索をかけても出てこない.
www.gendaiguitar.com

もちろんアマゾンにもない.



これは本当にドキュメンタリーフィルムであって,演奏はあくまでBGMにとどまっている.ただけっこういい角度からの演奏所見もあり,それなりに見応えがある.なによりも右手だ.完全にリラックスしており,手の甲はまったく動かない.特に私にとって,右手薬指と小指のリラックスは目下最大の壁であって,なかなか克服できていない.私は傲慢なので,「このくらいできないと」と本気で悩んでいる.

キューバから脱出してフロリダに渡ったところから話し始めている.

私は村上龍をたくさん読んでいて,彼は極端なまでのキューバ(そしてキューバ音楽の)支持者である.その影響があったため,私はキューバという国をある種のユートピアのように感じていた.しかしマヌエル・バルエコにとって,キューバは祖国でありながら抑圧の空間である.キューバからの脱出を彼は「押さえつけられていたものからの解放,たとえようのない幸福」と語っている.残っている肉親はいるが,彼はキューバに帰っていない.

演奏家にとってこのようなドキュメンタリを出すのは危険だ.革命と反動の文脈の中に自らの演奏が位置づけられてしまう可能性があるからだ.もちろんそのような文脈を用いて売り込むことは可能だし,プロモーション次第ではかなり有力な稼ぎ方だ.もちろん彼はギター界において圧倒的な地位を固めているため,そのような心配は少ない.とはいえちょっと鼻につくという人もなかにはいるだろう.

もっと実演のシーンがほしかったが,貴重なフィルムである.