師匠の家に送られてきたギターは3本であった.ベルナベというのはやはり半分ガセで,一本はラファエル・ロマン(パウリーノの息子,といっても病気でロマンは作っていない)ということであった.一応ベルナベ工房であるから,材料はいいのだと思う.もう一本は,忘れた..あまり知られていない.ただセラックニスの塗装が素晴らしく,やや個性的な音であった.音の線は細く,ネックの形状などもまだ改良の余地がありそうであった.

ラファエル・ロマンはやはり「左手が楽」.これはベルナベを弾いたときもそうだったのだが,この工房の特徴なのだろう.かなりきついセーハでも力を入れずに押さえられる.これは特筆すべきだった.音の系統はやはりベルナベと同じであり,甘い感じである.これを伝えるのは難しいが,バイオリンなどよりもオーボエを想像して頂いたほうがむしろ近いかもしれない.そういう甘さである.



購入したギターは,ホセ・マリン・プラスエーロである.
アントニオ・マリン・モンテロの甥っ子で,いまでは彼のブーシェモデルもホセが作成しているらしい.グラナダの同じ工房で作成されており,中堅どころでは最近国際的評価が急上昇中とのこと(GGのMookより).

たたずまいはスマートで,装飾も派手ではないが塗装はしっかりしている.背面の木目は素晴らしく,ネックはやや厚い感じか.糸巻きのヘッドが黒でこれがシックで良い.(デザイン的にはすごくかっこいいです).

写真はこちら.

音はクリアで立ち上がりはよい.音の系統は日本人制作家に近い.甘いと言うほどではないが,空気が立ちこめる感じはやはりスペインの製作家ならではか.とくにピアニッシモで弾くと,極端に音色が柔らかくなる.

まあこの辺は後からわかることなのだが,まず初めの印象は「ものすごい音量!!」である.遠達性が高いというレベルの話ではなく,実際の音量がでかい.どこまでもフォルテできる感じである.はっきりいって低音側の開放弦はまさにピアノ.初めはえせ玄人っぽく「音量なんて..」と少し敬遠したが,ピアニッシモの音色もかなり優れていることがわかり,迷いは無くなっていった.

ギターは音量が小さい楽器であり,音色で勝負というところがある.ただギターにとっての音量は,たとえばスポーツ選手にとっての身長のようなもので,あって困ることはあまり無い.またテクニックは訓練できても身長を伸ばすことができないのと同様,弾き方の工夫で音量がアップすることはない.そう言う観点からいっても,音量を追求する姿勢は悪くない.



以上,2時間ぐらい検討して,ホセ・マリンに決めた.ただ私のなかではベルナベがかなり美化されており,いずれ検証が必要だろう.

問題は,音量が大きすぎて練習で困るということだ.これはしゃれになっていない.