読み物の第一回は、和紙をはじめとした和雑貨を取り扱うにあたり大変お世話になっている京都のメーカー「鈴木松風堂」さんのデザイナー、村上真名美さんのインタビュー(後編)をお届けします。 

前編はこちらよりお読みいただけます。

 

和紙の良さって、そういう手作りの肌触りの温かみだと思うんです。これは、洋紙にはないと思います。

   村上さんの一日のルーティーンを教えてください。

村上正直な話、早起きは苦手なんですが、朝9時までに出社するので、7時には起きます。
出社したら、デザインや企画の仕事だけでなく、シフトの管理をはじめとするアドミ(管理事務)業務が多くあるので、それからはじめますね。たとえば、在庫のチェックは午前中に済ませよう、とか。型染紙の柄だけで34、商品にすると3000以上あるので、不足などをきっちり管理します。
そのような仕事を終えて、いったん落ち着いてからデザインを考えることが多いので、突発的に発生した仕事を含めたりすると、だいたい夜の7時半ぐらいまで会社にいます。終電近くまで…ということもたまにありますね。

牧野村上は、デザイナーとしてお客様と直接お話しする機会も多いです。
その他、先ほど話がでた在庫管理やシフト管理など「準備のための準備」と言われる仕事も多いです。
デザイン、企画、アドミ、そして営業面…村上が担う面はかなり多いです。
私は、お客様やお店と直接お話しする機会が多いので、それを村上の方にフィードバックするようにしています。

   最後に、和紙への思い入れをお聞かせください

村上実は、学生時代に毛糸で絵を描いたことがあって。 卒業制作は、ホームセンターを歩いていて見つけた、穴があいた遮熱のポリカーボネートに、静電気を利用して自分の顔を毛糸で描く、なんてことをしました。柔らかい感じを出したかったんです。
柔らかさや手触りへのこだわりは紙にも言えることで、気になる紙を見つけるとなんでも触ってしまうんです。少し違うものですが、食品サンプルなんかも、見つけると必ず触ってしまうんですよ。
和紙の良さって、そういう肌触りや手作りの温かみだと思うんです。これは、洋紙にはないと思います。
折り紙も、ただ白い紙で作ってしまえば発色はより強く出せるかもしれませんが、色と同じように手触りにもこだわっているので…。
うちの京都折り紙や日本折り紙を、インテリアとしてご利用いただいている方も多いみたいで、スタンド付きの紙枠をお付けした製品を発売しています。自分で手間をかけるという文化もあるし、折り紙を「一つの絵画」として見てくださる方が増えているんだと思います。

   ありがとうございました。

デザイナーさんの一日の仕事がどんなものかを知る機会はそうそうありません。
美大の学生さんなどには、若いデザイナーさんの仕事や想いをうかがい知ることができる、貴重なインタビューだと思います。
筆者は、車のデザインをしているデザインスタジオで働いていたことがあります。その時に、何人かのデザイナーさんと話したり、インタビューをする機会がありました。
デザイナーさんのメンタリティーには共通したものがあり、それは、ゼロからのものづくりというところに、デザイナーとしての、こだわりやプライドを感じていることでした。それが製品となって出来上がったときの充足感は、ほかの仕事ではなかなか味わえないものなのでしょうね。

自分の作ったものが商品として世の中に出ていく。これは何にも代え難い喜びだと思います。

今回、インタビューをしてくださった鈴木松風堂さん、そして、村上さん、牧野さん、本当にありがとうございました!