先月のナイアガラに引き続き、今月はトレラン!
Stone Mill 50M (ストーンミル 50マイル)
車なしでのアクセスが難しいトレランレースにおいて、自宅からタクシーで行ける距離とはなんたる幸運。
渡米してきてすぐそんなレースを見つけてしまい、それだけで思わずエントリー。
全行程81キロ、制限時間は13時間。

高低グラフを見ると、ほんとにトレイル!?と思うようなフラットな道のり。
それでも、ちょこちょこちょこちょこ登って下ってすると、累積標高は1400メートルにはなるらしい。
地図を見ても完全に街中の林を走る感じ。
もしや大半が林道だったりするんだろうか?
シューズはロード用の方がいいのか?
うーん、さっぱりつかめないこのコース。
わたしにとってフルマラソン以上の距離の経験は、STYの90キロ1回だけ。
あの時は累積標高も高くて歩きも多かったし、23時間かけた長い旅だった。
今回はSTYと違って基本全部走るようなコースで制限時間も半分。
そしてアメリカに来てからなかなか長い距離を走れていなかったし、TMBやナイアガラでの疲労っぷりを考えると不安はいっぱい。
でもせっかくのチャンス、まずは楽しんで走ろうと心に決める。
でももっと心配だったのは、きっと相方の方。
なんせ、ロードもトレイルもロングは初めて。
しかも普段全然走れていないから、距離としてはフルマラソンが精一杯。
本人は当日の朝まで参加を渋っていたが、1人での参加は不安だったのでわたしが無理矢理引きずりこんだ。
山奥じゃないから、いざとなれば途中のリタイアもできそうだしね。
そんなわけで今回はスタートからずっと行動を共にすることに。
何度も同じレースに参加しているけど、一緒に走るのはなんとこれが初めて。
楽しくなりそうだ♪
朝4時半にタクシーに乗り込み会場へ。スタート時の気温は氷点下2℃。寒すぎ!!
でも、空を見上げると星がとってもきれい!
わくわくしながら、6時にスタート。
真っ暗な中、ヘッドライトを付けて走り始める。

これから始まるんだな~と思うとうきうきする。
スタート直後の折り返しですれ違った人数の印象としては、だいたい真ん中あたりを走っている感じ。
うん、気持ちいいし楽しめそうなペース。
今回は2人で制限時間内にゴールすることが目標。
参加人数も少ないのでシングルトレイルでも渋滞にはならないから、休むのは必然的に自分の意思。
「歩かない」とかは決めていないので、疲れたら歩く。
特に気負いもないので、アメリカでの初レースを楽しむことだけ考える。
走っているうちに少しずつ夜が明けてくる。ぽつんと見える黄色い人が相方。

林道かもと思っていたコースは、いえいえ決してそんなことはなくって、ずーっとふかふかの落ち葉のトレイル。
晩秋の雰囲気たっぷりの気持ちのいい山道だ。
ただ…道がわかりにくい!
かろうじて踏み跡は見えるものの、落ち葉が敷き詰められているので気を抜くと道を見失う。
標識のテープがところどころについてはいるが、これも集中していないとアッという間に見失う。
左の黄色と緑がレースの標識。右の水色がもともとのトレイルの標識。

そして、5キロくらい走ったところで早々と前後の間隔があいてしまい、林の中には自分たちだけのことも。
ちょっと心細いしーんとしたトレイル。
時々前の人のTシャツが遠くに見えたりして、それだけで何だかほっとする。
ずっと2人だけが続くと、ふとレースに出ていることを忘れそうになったり。
「そろそろおにぎり食べるー?」「お茶いるー?」
完全に普段の山登りと化している気が・・・
そして、全行程中、時々追い越し追い越されるのはずっと同じ人たち。
何度も挨拶をし、すっかり顔なじみになる。
この15人くらいしかレースに参加していないんじゃないかと思うくらい、ほかの人たちとは全く会わない。
トレイルは馬も歩く。 すれ違う時は譲り合って。

時々道路を渡ったり

草むらを駆け抜けたり (ん? 歩いてる?)

でも、基本的にはほぼ全部林の中。ずーっとずーっと落ち葉の絨毯。

すーーーっごく気持ちいい

でも・・・ でも・・・・・ エイド以外は全く応援もなく、景色も変わらず、アップダウンもなし。
しかも、ここは狩猟地域。
「許可不要」とか書いてあるし、ボーガン持った迷彩服の怖そうなおじちゃんもいるし・・・
獲物と間違って打たれたらどうしようかと要らぬ妄想が膨らむ。
うーん、これ1人で80キロ走るのは気持ち的にちょっと苦しいかも・・・・・・・・ 一緒でよかった・・・
その代わり、エイドはとても充実。
ボランティアのみなさんが「ウェルカム!」と温かく迎えてくれる。
小学生くらいの子どもたちも、「何飲む? 水? スポーツドリンク?」と声をかけてくれる。
アメリカらしく、ボテトチップやらクッキーやらチョコレートやらゼリービーンズがいっぱい。
そして、どこのエイドにも手作りのサンドイッチ。
その場でピーナッツバターとジャムを塗って作ってくれている。
普段なら うわ~~~
と思う甘さも、この時ばかりは元気の源に。


余談だが、このレースの参加料はなんと35ドル(100円計算でも3500円)。
アメリカのほかのレースと比べてもありえない安さ。
参加賞やメダルをなくして経費を抑えているらしい。
なので正直エイドがどんな感じなのか不安だったのだが、そんな心配は全然いらなかった。
ただし。トイレがなーい!!!
エイドで「次のトイレはどこですか?」とスタッフさんにきいたら、「さぁ、わかんないなぁ。コース上かな!」 と笑顔で言われた・・・
その後、コース上の木陰に座り込む女性の姿をあちこちで見かけることに。
もちろんわたしも・・・
男の人はうらやましいなー、としみじみ。
コース上の関門は2か所。
<第一関門>46キロ地点:14時半(8時間半)
<第二関門>68キロ地点:18時(12時間)
<ゴール>81キロ:19時(13時間)
第一関門は1時間以上余裕をもって通過。
ちなみに昨年の記録を見ると、第二関門さえ通過していれば、ゴールの13時間は超えても少しなら走らせてくれるらしい。
ただし、第二関門に間に合ったとして18時では既に真っ暗。あの昼間でもわかりにくい道をヘッドライトを頼りに走るのか?
うーん、考えただけでオソロシイ・・・
できれば明るいうちに最後のトレイルに入りたい。
関門時間とペースを見比べながら、歩いたり走ったり。
ところが。
第一関門を過ぎたあたりから、相方の足の痛みが悪化してきた。
40キロ手前から痛そうにはしていたが、歩きを入れながらもけっこう頑張って走っていた相方。
少しずつ歩く時間を長くして粘ってみたが、とうとう60キロくらいから全く走れなくなってしまった。
それどころか歩くのもやっと。
そのうち、あたりが急に暗くなり始めた。

容赦なく、あっという間に太陽が沈んでいく。

「お前にそそのかされて、こんなことをする羽目になるなんて」
「もう長いのは出ない! これからは1人で出て!」
文句が山ほど飛び出すけど、声が弱々しくって消え入りそう。
うん、そうだよね~ どう考えてもムチャだったよね~ ごめんね~
でも、最初にUTMBの特番見せてわたしをそそのかしたのは、相方だけどね~
あれ~ じゃあ、一緒にUTMB出るとか、神流のスーパーペアロング走るとか、あの目標たちはどうなっちゃうの~~~
「もう知らない! 1人で好きに走って!」
う~~~~
仕方ない、ほとぼりが冷めるまで、しばらく甲斐甲斐しくつくして待つことにしよう。
しかーし!
そんなのんきなことも言ってられなくなってきた!
真っ暗闇の中でヘッドライトの明かりだけを頼りに歩くが、見ているだけでも痛々しい足の引きずり方。
一歩足を動かす度にうめき声がもれている。
このままこの暗闇で相方が動けなくなったら、わたしはどうすべきか。いろいろ頭の中でシュミレーションしてみる。
そっか、こうやって遭難って起こるんだ。
2人で1日10時間以上山を歩くのは普通だったし、何とかなると思ってしまっていた。
たかが近くの林の中だって車が入れなければ同じこと。
もっと簡単にリタイアできるとコースを甘く見て、嫌がる相方を無理矢理走らせた自分の浅はかさを反省。
日本のロングトレイルの参加要件が厳しいのはこういうことなのか、と今更ながらに痛感する。
転ばないように、迷わないように、神経を集中させながら、一歩一歩。
永遠に続くかと思われた苦痛の道のり。
と、そこに明かりが見えた!!! 関門だ!!! 助かった~~~~~~~!!!

到着したのは、関門閉鎖の20分くらい前。
スタッフさんにリタイアを告げる。ゴールまで走りたいと言えばわたしだけ走ることもできたかもしれない。
でも相方を残していくことは考えられなかったし、
おまけに、あの真っ暗闇の山道を残り13キロ、たった1人で走るのはあまりにも無謀。
遭難のリスクももちろんだが、夕方の買い物だって気を付けてって言われているアメリカで、さすがにそれはナシだよね、とすんなり納得。
スタッフさんの車で送っていただき、最後の選手たちが戻ってくる前に先回りしてゴールに到着。

わたしのアメリカトレランレースのデビューはこうして終了。
初めてのリタイアだったけど、でもなぜだか全然悔しくはなかった。
ずっと楽しい気持ちでいられたからかな。
残ったのは、一日中山を駆け回った満足感と、どんな山道も甘く見ちゃいけないという反省と、全身の筋肉痛。
でも、やっぱりなんだか走り足りない!
次のロングレースをさ~がそっと♪
そうそう。
真ん中よりちょっと後ろあたりを走っていたはずなのに、第二関門に着いた時、わたしたちの後ろにいたのはわずかに5人。
ゼッケン番号のラストが422番なのに、完走者数は259人。
完走率は公表されていないし当日の参加人数もわからないが、昨年の結果を見ても同じような完走者数だった。
このレース、いったい何人が途中でリタイアしているのだろう???