「ここは?」

 

目的地にはまもなく着いた。

ビークルから降りると大きな建物。

個人の家にしては大きすぎる。

 

 

「ここはねホテル」

 

「ホテル?」

 

「マッチングの時にアナウンスされるんだけど。

自分のテリトリーに他人を入れたくない人が使う公共施設。

さっきブッキングした。

歩ける?」

 

サトシはショウに手を差し伸べた、

何も思わずにショウはサトシの手に自分の手を委ねた。

温かいサトシの手に自分の手が握られるとまた胸がドクンと大きく鳴る。

反対の手を胸に当てた。

 

入り口らしきところが開いて中に入るととても狭い部屋になっている。

サトシがセンサーに端末をかざすとウイーンと低い器械音がして。

加速度を感じた。

チンと軽い高い音が鳴ると入ってきたドアが開いた。

そこには部屋があった。

 

 

「ベッドで休んで。こっちがベッドルーム」

 

ショウはサトシに手を引かれた。

 

 

「サトシさんは?」

 

「シャワー浴びてくる」

 

そう言われてショウは汚れたままでベッドに入るのに抵抗を感じた。

ベッドルームの入り口で足を止めた。

 

 

「シャワー・・・入りたいです」

 

「中で倒れたりしたら危ないよ?」

 

「でも汚れたままベッドに入るのは・・・」

 

「そうか・・・じゃあ・・・一緒に入ろうか?

そしたら何かあってもすぐに助けられるしね」

 

サトシが向きを変える。

引いた手はそのまま。

ショウの肩をそっと押してサトシは横をすり抜ける。

 

 

「こっちがバスルーム。

苦しくなったら、すぐに言ってね」

 

部屋の入口近くに別のドアがある。

そこに入るとユーティリティになっていた。

サトシがショウの手を離した。

自由になった手の行き場がなくなり、ショウの手が空をさまよった。