配送された装備を身につけた。

 

 

「ここからサクラの場所までは必要ない装備なんだけど。

明日の下りのことを考ると、今日、慣れて欲しい。

ロープの捌き方、特に木の枝や草に引掛かった場合の対処の仕方とか。

いざ、事故が起きた時の安全確保の仕方。

今日、歩きながら説明をするから。

頭にしっかり入れてって。

本来ならば、こんな風に実践で説明と慣らしをするのは危険なんだ。

それをよく心に留めておいて。

危険なことをしようとしてるんだってこと」

 

二人を繋ぐロープは先日使ったものと材質まで違っていた。

触ると硬く感じる。

ショウが見たこともないような金具を通してサトシの装備に繋がっている。

 

 

「基本的に、安全確保をしながらの移動はどちらか一方だけが動く。

この山はそこまで必要にはならないと思うけど」

 

水と携帯用の食料をバッグに入れた。

背負うとズシッと重みが肩にかかる。

 

 

「重い・・・ですね」

 

「そうだね。

でも、これは半日分だよ。

泊まりになると、これの何倍も重い」

 

サトシはショウより大きいバッグを背負っている。

きっと仕事に使う道具が入っているのだろう。

もしかしたらショウが持ちきれない分の装備も入っているのかもしれない。

 

 

「あの・・・荷物、サトシさんの方が多くないですか?

少し手伝いましょうか?」

 

「気持ちだけもらっとく。

ここまで登るだけで倒れる人にはこれ以上の荷物を頼めない。

今日のサクラまでの往復、明日の下山。

自分の荷物だけ持ってってくれれば、それでいい。

まずは自分の能力を正しく把握してもらいたい。

無謀さは危険につながるからね」

 

サトシはロープを手繰りながら、ショウの顔を見ずに言った。

それ以上、ショウには何も言えなかった。

自分は山において行動する能力が低いと見積もられているらしい。

経験が不足しているからなのか?

根本的な身体的な能力値が低いのか?

これから何とかなるものなのか?

なんともならず、適性がないままとなるのか?

今日と明日でそれが分かるのかもしれない。

サトシがショウの全身に視線を走らせた。

 

 

「じゃあ、出発するよ。

ここに戻ってくる予定は16:00

ショウくんに無理ないペースを見ながらの往復を考えて。

余裕を持ったスケジュールにしてる。

体力的に辛いとかあったら、すぐに言うこと。

それを知るのはガイドする上で大事な事柄だからね」