翔くんがつないだ手をキュっと握る。

あぁ、翔くんが大好きだな、って胸がキュってなった。

特に何がきっかけでそう感じたのか。

別に理由があるわけじゃないけど。

 

なんか・・・この人のこと好きになってよかったな、って。

この人に好きになってもらえてしあわせだな、って。

胸がいっぱいになるってこんな感じなのかもしれない。

 

握られた手を握り返すと。

翔くんが目を眇めて、僕の名前を掠れ声で呼んだ。

ゆらりとお湯が揺れた。

翔くんが身を起こして、僕に向き合ったから。

 

目を閉じると、ゆらりとお湯が押し寄せてきた。

肩に翔くんの手が置かれて。

ふわ、と顔に温かいほのかな風を感じたと同時に。

口唇が塞がれた。

頭の芯がぼんやりして、口が自然と開いていく。

その隙間から舌先だけが忍び込んでくる。

それに応えると、それで満足したように、スッといなくなる。

薄目を開けると、翔くんの目も薄く開いてる。

思わずといった感じに漏れた笑みがカッコよすぎて。

頭がクラクラしてくる。

思わず、ふふふ、と笑ってしまった。

こんなカッコイイイケメンが僕のこと、好きなんてさ。

なんか笑える。

 

 

「これ以上はやめとくよ。

二人で裸だし止まれなくなりそうだから。

そろそろ体洗おうか?

智くんがのぼせちゃう前に」

 

そうだね。

お風呂が苦手な僕はのぼせる寸前。

クラクラしてるのはそのせいもあるかも?

 

洗い場も広々として、二人並んで洗っても余裕がある広さ。

手早く洗って、もう一回あったまって。

出ようとして、どうしよう?って悩んだのが・・・・

着てた釣り用の服。

濡れてるから洗い場の隅に寄せておいたんだけど・・・

これ、持って帰るのに、困るなぁ。

後でおかみさんに相談しよう。

 

出ると、着替えに浴衣と半纏が置いてあった。

下着はバッグの中に入れてきてたけど・・・

客のバッグを勝手に開けるわけにいかないからか?

準備されてはなかった。

 

 

「パンツがないから、ちょっと心許ないね?」

 

翔くんが浴衣の下を気にする。

たしかに、ちょっとブラブラして心許ない。

 

 

「そうだね。

でも、持ってきてるから、大丈夫」

 

タオルで髪の毛を拭きながら答えた。

早く荷物からパンツ出さなきゃ。