おかみさんに頭を下げて、そのまま風呂に向かう。
釣り宿だから、お風呂は外から直接入れるようになってる。
いろいろ汚れてたりもするから。
翔くんの長靴を脱がせようとしてもなかなか脱げない。
足がそこまで上がらない。
しょうがないから、座らせて脱がせる。
タポンと水の音がした。
「翔くん、お風呂入ろう」
「智くん・・も」
「うん、僕も入るから。
この宿にはね、釣り船のお客さんが入れる大きなお風呂があるんだよ。
温泉みたいで、気持ちいいの。
脚も伸ばせて、疲れも取れるよ」
靴だけ脱がせたから、そのまま風呂場に入ってしまう。
湯気で温まってるから少しだけでも温まることを期待して。
話しながら、翔くんの服を脱がせていく。
濡れて貼り付く服を脱がせるのは大変。
それでも、脱がせていくうちに温かい湯気で体の冷えも落ち着いたのか?
翔くんの口唇の色が戻ってきた。
湯船から桶でお湯を汲んで、翔くんの頭からかける。
「先にお湯に浸かってて。
僕もすぐ入るから」
自分の服を脱ぐのも手こずった。
前に落ちた時もこんなだったよなぁ・・・
裸になって、お湯をかぶる。
冷えた体にはお湯がものすごく熱く感じる。
先にお風呂につかってる翔くんはだら〜んっていうのがピッタリ。
手足が伸び切って寝そべるようにあったまってる。
すっかり顔色が元に戻ってて、一安心。
僕も翔くんの隣に入ろうとしたけど・・・
お湯が熱く感じてなかなか腰が下ろせない。
昔、プールに入る前にやってたみたいにぴちゃぴちゃと体にお湯をかける。
それに翔くんが気付いて、僕にバシャーっとお湯をかけてきた。
「んもう!翔くん、熱いってば!」
「すぐ慣れて気持ちよくなるから。
最初だけ我慢して浸かっちゃいなよ。ほら」
翔くんは体を少し起こして僕の手を引っ張った。
その手に引っ張られるままにお湯に体を沈めていくけど・・・・
熱いものは熱い!
「翔くん・・・熱いよ」
ふと、翔くんが僕の腕や肩に目を留めた。
手で優しく労るようにそこを何回も撫でていく。
「ごめん・・・あざができちゃったね。
あの時・・・痛かったよね?」
翔くんが泣きそうな顔をした。