おかみさんの作ってくれたお弁当は二人分には多かった。
船長基準なのかもしれない。
船長は体使う仕事だからなのか?
体格も筋肉質でがっしりしていて背も大きい。
一緒に釣りに出た時も、よく食べてた。
僕の倍くらい食べてた気がする。
船長二人分ならこれくらいかも。
「翔くん、無理しない方がいいよ」
って僕が言う前に翔くんはかなり頑張って食べたみたいで。
もう限界って、さすってるお腹はパンパンになってた。
「少し食休みさせて〜」
動けないほどに苦しいんだね。
くすくすと笑いが出る。
「んじゃ、僕は先に釣り始めてるね。
釣れないと今夜の食事が貧相になるから」
僕も自分で作ったルアーで釣ってみようかな。
タックルボックスから青い迷彩のルアーを取り出した。
結び替えてると・・・
「ルアーもお揃い?」
「うん、そう。揃いで作った」
軽く竿を振って、ルアーの重さを確認する。
うん、これくらいね。
自分用のこのルアーも初使い。
どうか、釣れますように。
ルアーを指先で撫でて。
竿を大きく振りかぶった。
シュルルルと糸が出て行く。
船から離れたところにルアーが着水して、どんどんと沈んでいく。
竿を持つ手に神経を集中するために目をつぶる。
コツンと小さく竿に振動が伝わった。
ルアーが底に着いたんだろう。
糸の動きも止まる。
ルアーがちゃんと泳いでくれるか?
テストしたわけじゃないから、出たとこ勝負。
クイクイっと竿を立てるように動かしつつ、少しずつ糸を巻き上げていく。
手応えは全くなく、ルアーが水面から表れた。
くるくると糸を巻く。
何回かやっても、手応えなし。
「そっか、そういう風にするんだ」
翔くんの声で自分が観察されていたことに気付いた。
「小さい魚が泳ぐみたいにルアーを動かす・・のが理想なんだけどね。
僕の作ったルアーだから、水の中でどう動くのか?
テストなんてしてないからさ。
まあ・・・テキトーだよ」