お弁当の包を開ける。

プラ製の容器が2つ。

それぞれ、おにぎりとおかずが入ってる。

おにぎりは深川めしを握ったもの。

貝が好きな翔くんに一度食べさせたかったんだ。

貝は悪くなりやすいから、おみやげに持ち帰れなかった。

 

案の定、おにぎりを見た翔くんは目を輝かせた。

 

 

「うおー!深川めし??

大好物!

いただきます!」

 

「翔くんっ!お手拭きあるから、まず手を拭いて!」

 

使い捨てのお手拭きが入れてあった。

袋を破いて、お手拭きで念入りに手を拭いた。

やっぱり、このご時世だからね。

気を付けないと。

 

 

「船宿のおかみさんの手作りなんだけどさ。

もう・・・最高なんだよ。

一回、翔くんに食べさせたいって思ってたの。

おみやげに持って帰れないからさ。

釣りに来てもらわないと食べられない」

 

「んーんん」

 

口の中いっぱいにおにぎりを詰め込んだ翔くんが頷く。

 

 

おかずも天ぷらに煮物に胡麻和えにお漬物と和風。

船の上で食べるお弁当とは思えない美味しさ。

魚肉ソーセージも美味しいけど・・・・

こういう和風なお弁当はやっぱり好きだなぁ。

翔くんはどうかな?

深川めしはアサリが入ってるから好きだろうけど。

 

 

「んんっまいっ!」

 

やっと口の中からおにぎりがある程度なくなったのか?

翔くんがまだもぐもぐしながら叫んだ。

 

 

「そうでしょ?

おかずも食べて!」

 

割り箸を割って渡すと、天ぷらから箸を付けた。

抹茶塩が振ってあるキスの天ぷらはちょっと衣がしんなりしてるけど。

衣が口の中にぐさっと来なくて、僕は割りと好き。

かき揚げにはごぼうが入ってて、その風味が好き。

今度家で作るときにも入れようっていつも思うのに・・・

買って帰るのを忘れるから、まだ作ったことはない。

 

翔くんがまた口の中パンパンになるくらいにおかずを押し込む。

 

 

「いっぱいあるから、焦らないで食べて」

 

口元に付いた抹茶塩を指で拭った。