「何バカなこと言ってんの!」

 

僕に突き放される前に離れた翔くんはくすくす笑ってる。

 

 

「バカなことじゃないでしょ?

好きな相手とセックスしたいと思うのはさ。

人間として当たり前の欲求でしょ?

智くんは違うの?」

 

「え・・・・っと」

 

そんなことハッキリ言えるわけないじゃん。

口ごもってたら、翔くんはその先まで追求はしてこなかった。

こういうとこ、優しい。

 

 

「だからね。

今夜、シたいなーと思ってる。

いいですか?」

 

って、もっと答えられるわけないじゃん!

 

 

「そんな許可なんて今まで取ったことないくせに!

いまさら、言うなよ!」

 

「ふふふ、ちょっと可愛い智くんを見たくなってさ。

照れてる智くんが可愛すぎるんだよ。

予約成立のキスくださいな?」

 

くださいって言ってるのに、キスをしてくるのは翔くん。

なんだろう。

深くはならないのに、やけにねっとりした感じのキスで。

ブルって体が震えた。

寒いんじゃなくて・・・なんか・・・

翔くんの色気に当てられたっていうか。

しっかりしてないと、腰砕けちゃいそうな感じ。

 

 

「寒い?」

 

「ううん。違う。なんでもない」

 

そっと翔くんの腕の中から抜け出した。

はぁ、って深呼吸をすると、脚に力が戻ってきた。

 

 

ポケットの中のスマホがブルっと震えた。

 

 

「あ、船長からだ。

潮目がよくないから午後からの方が釣果が期待できる。

だって」

 

「じゃあ、ちょっと早めに今、休憩入れるのが正解だね」

 

「じゃ!お弁当食べよう!」

 

威勢よく声を張った。

照れ隠しなのは、自分でも分かってる。

顔が熱い。