「誘惑されてるのか?って。

どうせ誘惑するんならさ・・・こっち、がいいな」

 

翔くんが自分の口唇を指さす。

ちょっと突き出した口唇がプクンとしてて。

翔くんのそういう時の顔、すごい色っぽいなって思う。

翔くんの指を口から出した。

 

 

「こっち?」

 

「そう、こっち」

 

腰を抱かれて、引き寄せられると・・・・

翔くんのプクンとした口唇が僕の口を塞いだ。

 

 

「ん・・・」

 

柔らかくて優しいキスで。

そのまま離れそうになったのが、物足りなさを感じて。

自分からまた押し付けた。

 

気が済むまでキスして。

はぁ、って息を吐きながら離れると。

 

 

「ほら、そうやって誘惑する。

智くんはホント・・・困った人だよね」

 

そう言って、僕の耳元にチュッとキスをした。

 

 

「んふふ。誘惑なんてしてないよ。

傷口の消毒しただけ」

 

「そう?なんか舐め方がヤラシかったよ?」

 

「そんなことしてないしー!」

 

なんてじゃれあってるうちに、ふと思い出した。

海の上とは言え、どこから見られてるかは分からない。

釣り船が離れてるとは言え、数隻出てるし。

東京湾の周遊フェリーだってある。

どん、と翔くんの胸を押して離れた。

 

 

「え?何?なにがあった?」

 

「ごめんっ!」

 

僕は慌てて翔くんから離れた。

そうだよ!

つい、キスしちゃったじゃん!

翔くんのキスがあんまりにも柔らかくて優しかったから!

 

 

「どこからか見られてるかもしれないからっ!

僕は休み中だからいいけど、翔くんは仕事続けてるんだから・・・

こんなとこ見られたら大変だよ。

大騒ぎになっちゃう」

 

「いいじゃん、なったって」