僕は猛烈に後悔していた。

なんで翔くんにルアー渡しちゃったんだろう。

僕がちゃんと糸に結んで、後は投げるだけにしとけば・・・・

 

その綺麗な翔くんの手に傷を作る原因になっちゃって。

ルアーを持った翔くんの手に自分の両手を添えた。

 

 

「ごめん・・・僕のせいで、ケガ・・・」

 

「智くん、そんな顔しないで。

俺がヘタしただけだから。

それに手の平側はあんまりカメラに向けないから。

大丈夫だよ」

 

血がにじむ翔くんの手からルアーを取り上げようとした。

でも、翔くんは渡してくれなかった。

無理に取り上げようとしたら、また傷が増える。

 

 

「翔くん、離して」

 

「なんで?これは智くんから俺へのプレゼントでしょ?」

 

「そうなんだけど・・・僕が竿に付けてあげるから」

 

「自分で結べるよ?」

 

「釣り糸は解けやすいから、特別な結び方があるんだよ」

 

そうだよ。

結局は僕が結んであげなきゃだったんだから。

最初から渡さなきゃよかったんだよ。

 

 

「じゃ、船長、お願いします」

 

翔くんはにっこり笑った。

何事もなかったみたいに、手を広げて。

赤いルアーがコロンと手の平の上で転がった。

 

 

「うん、任せて」

 

針の部分を持って、そっと手の平から持ち上げた。

針は魚型のルアーの腹の部分に付けてある。

バランスが悪いのか?

魚は頭を下にして持ち上がっていく。

手の平にキスしてるみたいだった。

 

ルアーを自分の手に納めて一安心。

翔くんの手の傷をじっくりと見た。

傷口のある指を口に含んだ。

化膿したら大変。

 

 

「智くん・・・そんなことしてると、俺、誤解するよ?」

 

「んん?」

 

誤解?