何回かやってるうちに、大分、翔くんの手さばきも様になってきた。
それでも、一匹も引っかからない。
翔くんの竿だけでなく。
僕の竿にもヒットはなし。
1回底に引っかかったのか?無駄な期待をしただけ。
「うーん・・・釣れないねぇ。ごめんね。
つまんないよね・・・ちょっと移動しようか?」
「んー移動した方がいいんですか?船長?」
「どうかなぁ?寒いから魚も底でじっとしてるのかも」
「こっち側の景色に飽きたから反対側に行ってみるかな」
翔くんは船の逆側面に移動した。
どうかなぁ?
翔くんのサポートとして、僕も移動。
釣れたときにはタモでサポートしなきゃいけないし。
デート・・・だもんね。
やっぱり側にいたい・・・よね?
移動の途中でタックルボックスから新しいルアーを出した。
「翔くん、ワームも飽きただろうから、これで釣ってみてくれない?」
「これ・・・なに?迷彩柄?」
「翔くん用だから赤系の迷彩にしてみた
えっと・・・プレゼントに作ったんだけど・・・
使ってくれる?」
「え・・・これ・・手作りの?俺に?
ありがとう!智くん!
手作りしてくれるなんて・・・ものすっごい嬉しい!
でも・・・さ。
こんな模様の魚なんていないけど・・・釣れる?」
「色はあんまり関係ないんだよ。
ワームもいろんな色あるでしょ?
ラメ入ってるのもあるし。
動きが実物に似てれば似てるほど、よく食いつくから。
ルアーを泳がせるつもりで頑張ってみて。
ちょっとワームと竿にくる手応えが違って面白いかも」
はい、と、翔くんにルアーを渡すと、ひっくり返しながら見ている。
「すごいなぁ・・・こんなものまで作れるんだ・・・
いてっ」
ルアーについている針が指に引っかかった。
痛みで手が反射的に離そうとして。
落とすまいとしてまたルアーを握って。
翔くんの手にいくつか傷がついてしまった。
ZEROでフリップを持つ手が見苦しくないように、って。
爪を噛む癖を意志で克服した翔くん。
手荒れしないように、気も使ってるのに。
☆★
コメントでバカップル歓迎ムードが漂っていたので〜(笑)
安心して続けられます!