「翔くん、準備できた?」

 

「待って。まだ持ち物の最終チェック中」

 

「翔くんは何も持ってかなくていいの。

今日は僕が翔くんを招待しての釣りツアーなんだから。

スマホくらいでしょ?」

 

大きいバッグの荷物を覗きこんでる翔くんを引っ張った。

翔くんはしぶしぶ?

スマホと財布だけを入れた小さいバッグだけを持って付いてきた。

 

 

「あれ?智くん、荷物これだけ?」

 

「大きい荷物は昨日、船長のとこに持ってった。

装備のチェックしてもらうために」

 

「あ、だから、智くんもそんな身軽なんだ」

 

僕もウエストポーチ一つ。

スマホと財布と鍵だけ。

エレベーターを待ってるとスマホに通知が来た。

 

 

「タクシー来たよ」

 

「え?俺の車で行こうよ」

 

「今日は僕の釣りツアーだから。

翔くんはお客様。

翔くんは何もしないで、僕に任せてくれる?」

 

「分かりました。じゃあ、最初に一つ、サービスしてくれる?」

 

「なに?」

 

「ツアーの添乗員さんからの熱烈なキスが欲しいなぁ」

 

「そんなことできるわけないでしょ」

 

「そんなこと言わないで〜」

 

翔くんがにやける。

 

このマンションは一台のエレベーターを使うのは、各階2軒だけ。

エレベーターに乗ると、監視カメラがある。

ここにはカメラがないはずだから・・・大丈夫かな?

 

翔くんの肩に手を載せて、チュっと軽く音を立ててキスをした。

家の外でそんなことするなんて・・・初めてで。

なんていうか・・・僕も浮かれてるんだな。

 

 

「添乗員さん、それは熱烈なキスとは言えませんよ」

 

なんて言って。

翔くんが僕の腰に手を回して、熱烈なキスをしてきた。

チン、とエレベーターが到着した軽やかな音が鳴ったのに。

翔くんは口唇を離してはくれなくて。

熱烈すぎるキスについ・・僕も・・・

翔くんの背中に腕回して応えちゃって。

でもこれは僕からのサービスじゃないよね?