「・・・智くん、起きてたの?」
「さっき、翔くんに抱きつかれて目が覚めたの」
「あーそうか。
起こしちゃてごめん」
「そろそろ起きないとだから、ちょうどよかったよ。
で・・・さ。
お風呂・・・入りたいんだけど・・・」
「承知いたしました。
準備してくるから待ってて」
額にキスをしてベッドから出た。
ほとんど自力で動けない智くんを風呂に入れるのは・・・
なかなか楽しい。
恥ずかしがって口では抵抗するけれど。
手助けなしでは動けないから、結局、俺の意のままに。
甲斐甲斐しく智くんお世話をする専任執事になるのも悪くない。
服を着せ、髪を乾かし。
ついでに追加で痕を付ける。
以前の約束通り。
お互いに見えない場所にも痕を残す。
これも智くんとの絆の一つ。
「僕が、行ってきますって出るときにも。
付けてくれる?」
「数えきれないほど付けるよ。
智くんを狙う相手への牽制にもなるからね」
「そんなのいないけど。
僕も翔くんにいっぱい付けさせてもらうね」
んふふ、と笑う智くんの表情は穏やかなものだった。
そんな風に入浴後も、だらだらとした時間を過ごした。
俺は仕事が始まるまで。
智くんは人生を考え始めるまで。
の、数日のモラトリアム期間。
こんな時間がたまにはあってもいい。
がむしゃらにやらなきゃいけなかった若い頃とは違う。
体力も体も精神も。
20年以上も時を、経験を重ねた。
20年重ねた年月の分、
俺らは強くも脆くもなった。
変わるものも変わらないものもある。
それは俺らが分かっていればいい。
END