契約料と仮払いの経費はかなり高額だった。

それでもショウは契約することに躊躇うことはなかった。

端末で払込をすると、すぐさまサトシは必要なものを注文。

届くまでの間に二人は朝食を摂った。

昨夜食べたようなミールではなく。

前回食べたような携帯用の保存の効く食料だった。

口の中でもそもそするそれをショウは水で流し込むようにして食べた。

 

決して味わって食べるようなものではないけれど。

必要な栄養補給するには非常にコンパクトで携帯しやすい。

水はコンパクトにならず、重さも変えられない。

山の行動において、水と食料はとても大事だ。

しかし荷物の重さは体力をすり減らす。

ショウは前日の経験から実感した。

ならば、軽くできるものは軽くしたほうがいい、ということなんだろう。

 

コンパクトであっという間に食べ終わってしまうような携帯食料。

それでも摂取すると体が心なしかぽかぽかしてくる。

 

 

「もっと食べられそうなら、もう一つ食べておいて」

 

サトシが差し出したのは同じような携帯食料。

それても、慣れないショウを気遣ったのか?

異なる味の食料だった。

 

 

「昨日の食事が少なすぎるからね。

今日は食べられるようなら、少し多めに食べておいて欲しい」

 

まだ満腹感を感じてはいなかったので、ショウはそれも食べ始めた。

食べ終わったサトシは自分の荷物の整理をしている。

手を動かしながら、ショウに話しかけた。

 

 

「山ではパートナーと運命を共にすることになる。

ショウくんが危険なことをすると二人が危険になる。

それは二人分の命にも関わることになるってこと。

よく覚えておいて。

仕事として、ガイドを請け負いはしたけれど自分の安全が優先だから。

ショウくんを見捨てることもある。

この山はそこまで危険なルートはないけど。

心構えとして覚えておいて。

相手を助けようとして共倒れになるのはダメ。

自分だけでも安全な場所に向かって。

そこから、救助を要請するのが山での行動規範だから」

 

山はあまりにも日常と違っている。

しかしそのことすらショウには理解できていない、

ショウは人と共に行動すること自体、経験がなかった。

常に自分だけの生活。

自分の意志を優先させてきた。

自分の身の安全が優先なのは、当然だと思っていた。

契約条項にも書いてあった。

改めて確認されるまでもない、と思いながら聴いていた。

 

 

「分かりました。

救助を要請する関係機関を教えていただけますか?

端末に入れておきます」

 

ショウは自分は使うことはないだろうと思った。

危険に陥るのはきっと経験のない自分だろうから。