「ママー!“た”ってどうかくの?」

 

らんは最近、保育園のおともだちにおてがみを書くのがブーム。

家に帰ると、お気に入りのメモに一生懸命手紙を書く。

らんが帰ってきてからの忙しい時間帯。

夕食の準備や洗濯、保育園からのおたよりのチェック。

翌日の保育園の準備までできて。

助かっている。

 

らんが字を教わりに来た時に書けるように。

キッチンにもメモと書くものが置いてある。

 

 

「“た”はね、こうかいて、こうして、中に“こ”を書くよ」

「ありがと、ママ」

 

メモを一枚破って持っていった。

いつもと違うのはカウンターで書いてないこと。

普段は保育園でのことを話しながら書いてるのに・・・

 

もしかして、好きな子にラブレターでも書いてるのかな?

パパたちが知ったら、泣いちゃうかもしれない?

なんて考えてたら、くすくす笑いが出た。

 

 

「ただいまー

智くん、何笑ってるの?」

 

「翔くん、おかえりなさい。

今日は早かったね。

夕飯一緒に食べられるから、らんが喜ぶよ。

らんがね、おてがみをおともだちに書いてるんだけど。

可愛いなぁ、って思ったら、つい、笑いが出ちゃった」

 

また、くすくす笑ってたら。

翔くんがらんの目を盗むようにして、チュッとキスしてくる。

 

 

「らんと遊んでくるよ」

 

そう言って、もう一回、ちょっとだけねっとりしたキスをしてきた。

顔・・・赤くなってないかな?

自分の頬に手を当てた。

翔くんはらんの隣に座ると、書いてる途中のおてがみを覗きこんだ。

らんとこそこそナイショ話をしてたかと思うと。

真面目な顔でスマホを操作する。

 

 

「ママ!しょうパパとおかいもの、いってきていい?」

 

「おてがみに貼る、シールが欲しいんだって。

ちょっと二人で買ってくるよ」

 

「分かった。あんまり遅くならないようにね」

 

二人で出かけると、途端に家の中が静かになる。

ずっと前は一人でいるのが好きだったのに。

らん、もっと小さい頃は僕の側から全然離れなかったのにな。

成長を感じるのは嬉しいけど・・・ちょっと寂しさもある。

二人は30分程度で帰ってきた。

ちょうど、夕食が準備できた頃合いで、丁度良かった。

 

 

 

らんは最近、子供部屋で一人で眠るようになった。

そんなのもあって、ちょっと寂しいって思うことも増えた。

その分?みんなとゆっくり夜の時間を過ごせるようにはなったけども。

 

間接照明って穏やかな光で落ち着く。

寝室の照明を間接照明にしたのは、らんがまだ赤ちゃんだった頃。

僕もよく眠れるように、って。

 

 

「んっ、らんの前でキスしたらダメって言ってるのに・・・」

 

「らん、あの時はおてがみに夢中で見てなかったよ?

智くんだって、あの時も待ってたみたいだったし?」

 

チュ、チュ、と、翔くんが僕の頬に額に口唇にキスを落としていく。

その間にも翔くんは僕のルームウエアの中に手を入れる。

くすぐったさに身を捩る。

 

 

「キスされるのは、好きだもん」

 

「じゃ、これからの時間は思う存分させていただきますよ?」

 

「うん」

 

抑えつけられるようにのしかかられる。

その体の重さが好き。

頬にかかった手が頭までも抑えつける。

ベッドでの時間はキスされそうになっても逃げないのに。

くすくす笑う僕に翔くんがキスをする。

すぐに笑う余裕もなくなって・・・・

 

「智くん・・・」

「ん・・・しょ・・・くん・・・」

 

 

 

翌朝、らんを起こしに子供部屋に行くと、もう起きてた。

 

 

「おはよう、らん。

今日は一人で起きられたね?えらいね」

 

「うんっ!」

 

僕の腰のあたりに抱きついてくる。

しゃがみこんで、ぎゅっと抱き合う。

らんのくしゃくしゃになった髪がくすぐったい。

 

 

「ママ、きょうもはやくかえれる?

ごはん、いっしょにたべれる?」

 

「うーん。今日のお仕事はちょっと遅くなるかも。

ロケで遠くに行くから。

でも、まさきパパが早く来られるって言ってたから。

お迎えもまさきパパだよ」

 

「うん・・・しょうパパとかずパパは?じゅんくんは?

ママも・・・はやくかえってきてね?」

 

らんがそういうこと言うのは珍しい。

僕たちの仕事がどんなものなのか?

小さいなりにちゃんと理解してて。

ダダをこねたことはない。

ちっちゃい頃からみんながキチンと説明してくれてたおかげ。

 

「みんなのお仕事はどのくらいで終わるか分からないや。

ママもお仕事が3時間巻になるように頑張るね」

 

と、言ったけど・・・・なかなか上手くはいかず。

2時間巻で終わった。

 

なんか・・いつもより疲れたな・・・寝不足のせいかな?

送ってもらってる間、送迎車のシートでうつらうつらしてると。

スマホの通知音がした。

大した内容じゃないだろう、とほっとくと、何回も立て続けに鳴る。

なんだ?と思って見てみると。

嵐のグループLINE。

みんな今日は仕事が早く終わったみたい。

仕事終了の連絡が連続して入ってた。

僕も仕事終了、帰宅途中です、って連絡を入れた。

相葉くんに電話した。

電話に出たのはらん。

 

 

『もしもしー?ママ?

おしごと、おわったの?』

 

「終わったよ。早く終るように頑張ったよ。

でも、まだ車で送ってもらってるところ。

帰るのはもうちょっとかかるかな。

まさきパパとご飯食べててね」

 

はーい、とらんの返事が聞こえた後、相葉くんに電話が変わった。

 

 

「お疲れ様。大ちゃんの分もご飯準備してあるから。

手ぶらで帰ってきてね。

今日、ちょっとらんが寂しがってるから。

なる早で!」

 

「分かった。マネージャーに言ってみる」

 

マネージャーに伝えると、じゃあ、途中休憩なしで。

と、返事が戻ってきた。

それでお願いして、もう一回、シートにもたれかかった。

もうちょっとだけ眠っとこう。

 

 

声かけられたのは、マンションの地下駐車場。

お疲れ様と声をかけて、次の仕事の迎え時間を確認して。

車を降りると、すぐ目の前がエレベーター。

ちょっとだけ眠気が残ってる頭をしゃっきりさせるため。

エレベーターで頬をパンと叩いた。

 

 

 

「ただいまー」

 

玄関に入ると、靴がいっぱい。

あれ?みんな来てるの?

中が賑やかでらんがみんなになんか言ってる声が聴こえる。

 

 

「何してんの?」

 

言いながら、リビングに入って・・・・声を失った。

 

 

「なに・・・・・」

 

「おたんじょうびパーティだよ!

きょうはママのおたんじょうび!

えっと・・・おばあちゃん、いつもうんでくれてありがとう!」

 

僕はらんの前にペタンと座り込んだ。

らんが首に腕を巻きつけて、膝に座ってくる。

その小さい体を抱きしめて。

しあわせを噛みしめる。

こんなちっちゃいのに、僕の誕生日を祝ってくれるようになったんだ。

 

膝から降りたらんは僕の手を引いて、いつもの席に座らせる。

そこには封筒が5枚。

赤、緑、黄、紫、そしてマルチストライプ。

僕は真っ先にマルチストライプの封筒を手に取った。

らんが嬉しそうにする。

 

 

だいすちなままえ

あたんじようび あめでとう

あやすみには いつぱい あそんでね

 

らんより

 

 

「らん・・・ありがと・・・

ママ、すっごい嬉しい。

一生懸命お手紙書いてくれたんだね」

 

去年まで字なんて書けなかったのに。

いつの間にこんなに成長したんだろう。

間違ってる字もあるけど、こんなおてがみもらえるのはきっと今年だけ。

来年には上手に字の間違いがない手紙になっちゃうんだろうな。

 

他の4通の手紙。

どれから読むのか?見張られてるみたいで。

後で読む!って言って、その場では読まなかった。

 

 

みんな仕事が早く終るように調整してくれてたみたい。

部屋の飾り付けしたり、料理やケーキの準備したり。

 

その夜は楽しくて嬉しくてしあわせで、ずっと笑ってた。

時々、楽しすぎて嬉しすぎてしあわせすぎて。

涙出てきちゃうこともあったけど。

 

その日の夜はらんがママと寝る、って僕のベッドで一緒に寝た。

らんが眠ってしまった後。

みんなからもらった手紙を読んだ。

みんなからのラブレターで、僕はまたしあわせの涙を溢れさせた。

 

 

 

大好き。