「頼む?」

 

「ここまで配送してもらう。

空輸になるから、費用はかかるけど。

この山だったことが不幸中の幸いだよ。

ある程度、平地がないと配送もしてもらえないからね」

 

こんな山の上までも配送してもらえることにショウは驚いた。

ならば、あんな苦労をして登ってこなくてもいいのでは?

と、ショウは考えた。

 

サトシは携帯用の端末を操作している。

しばらくして配送されたものは食事や水だけではなかった。

サトシがショウの家で洗濯をしていたものと同じもの。

ショウには使い方の見当も付かないような道具。

 

 

「悪いけど、あとで必要経費として請求させてもらうよ」

 

「あ・・・それなら・・・」

 

ショウはその場で支払おうとしたが、まだ他にもかかるだろうから。

と、サトシに断られた。

 

ショウにとってはまた初めてのことばかりだった。

こんな山の上に人が登ってこられることも初めて知ったが。

そこで普段と変わらない食事を摂れることも初めて知った。

 

テントから離れた樹の下でミールを食べながら、サトシに問いかけた。

 

 

「こんなところまで配送してもらえるんですね。

それなら人も直接ここまで運んでもらえるのでは?」

 

サトシは口の中の物を飲み込んでから苦笑した。

 

 

「それだと経費がかかりすぎる。

樹の治療のためにそれだけの経費はかけられない」

 

そういって、先ほど配送してもらった荷物の配送料をショウに示した。

驚くほど高額だった。

 

 

「配送チューブやルートから外れた場所への配送料はね。

かなり高額なんだよ。

だから荷物の配送も山の入口までしか頼めない。

登ってみないと受け取りのための平地があるかも分からないしね。

現在の社会構造だと、あくまでも成果への報酬だからね。

経費はその中から捻出するようになっている。

あの荷物でこの配送料だから・・・

人ひとりをここまで運ぶのにいくらかかるのか?

考えたこともないよ」

 

ショウはとっくに食べ終わってしまって手持ち無沙汰になった。

こんな場所では何もすることがない。

同じミールをサトシはまだ食べ終わらない。

ショウは今まで何もかも効率で考えていた。

生活の一切が効率重視。

食事なんて必要な栄養補給のため。

時間をかける必要はないと考えていた。

サトシの食べ方を見ているとメニュー一つ一つを気にかけている。

時間がかかって効率が悪い。

それでもサトシは気にせず食事をしていた。