「何やってんだよっ!」

 

ショウは眠りの中で誰かに叱られていた。

叱られることは子どもの頃、ナニーロボットにされた以来だった。

人間に自分の行動を否定されるのは初めての経験だった。

ナニーロボットが行動を制限するのは、ショウに危険が及ぶ時だけだった。

だからサトシが同行を拒否したことを受け入れられなかったのだろう。

自分がやりたいことは全てやってきていた。

ショウは今まで賞賛される業績をあげ続けてきた。

誰も自分のやることを否定するわけはない、と。

無意識のうちに感じていたのかもしれない。

 

ショウの体は起こされて、持ち上げられた。

ゆさゆさと揺られる。

自分がどういう状況になっているのか?

目を開けて確認することすらできないくらいに疲れていた。

 

 

「軽すぎだよ。

もうちょっと鍛えないと無理だよ。

無謀さは山では命取りになるんだから。

自分の、だけじゃない。

同行者の命まで危険にさらすんだよ」

 

いつの間に背中のバッグが降ろされたのか?

仰向けに寝かせられても、苦しくはない。

 

 

「水と食事は摂ってたのかな?」

 

ゴソゴソと音がする。

 

 

「あぁ、ちゃんとそこは準備してきてたのか。

なら、まだそんなに心配しなくていいか。

うーん・・・水はもうちょっと飲ませた方がいいか?

水、なんとか飲めない?」

 

飲めると思う。

声は出なかったけれど、“飲める”と口を動かして返事をした。

 

 

「声、ちゃんと聴こえてるんだね?

今から飲ませるから、頑張って」

 

ショウは口を開けようとした。

体を抱きかかえられて起こされ口元に水のボトルが当てられた。

だが水はうまく口の中に入らない。

口元から溢れるばかりだった。

 

 

「あーダメか。

しょうがない」

 

口に何か温かいものが触れ、口の中に生ぬるい水が流し込まれた。

ショウが飲み込むと、また、少しだけ流し込まれる。

それが何回も繰り返された。

ショウは自分で十分に水分を摂っているつもりだった。

しかし必要な水分が足りていなかったのかもしれない。

水の次には口に何かの塊が押し込まれた。

それは少しずつ溶け、口の中に甘味が広がってていく。

どろどろになったものが口に中にあるのが嫌で。

ショウはそれも飲み込んだ。