明るい時間にはサトシの足跡を追って斜面を登り続けていたのに。
薄暗くなって痕跡が分かりづらくなった。
疲れで頭がボーっとして、注意力も散漫になっていた。
ほどなく、ショウはサトシの後を追っている確信が持てなくなった。
それでも意識だけは上へ上へと向かう。
手を伸ばし、脚を引き上げ、なんとか意識が向かう方向へと体を持ち上げる。
すでに日は落ち、暗闇が迫ってきていた。
東からは明るく光る星が昇ってきていた。
ショウはそのことに気付かなかった。
ただ手の先数十センチを見ることだけで精一杯だった。
斜面の終わりが見えた。
その先には木がなかった。
そこまではなんとか這い上がろうと。
ショウは最後の力を振り絞って体を引き上げた。
大きな起伏のある割りと平な場所に出た。
ショウは俯せたまま、動けなかった。
頬に草が触れて、くすぐったい。
顔に触れるものをよけるために手を動かすことすら億劫に感じる。
地面からなのか?草からなのか?
変な匂いがしてショウは気分が悪くなりそうだと思った。
足を動かしてなんとか体を動かす。
仰向けになりたがったが、背中のバッグが邪魔だった。
しょうがなく、バッグにより掛かるようにして横を向く。
すっかり暗くなった空にポツポツと光が見えた。
変な匂いが体の周りに漂っているような気がしたが。
慣れたのか、横を向いたからなのか、あまり気にならなくなった。
遠くの方で鳥の鳴き声が繰り返し聞こえた。
ショウの近くで鳴いていた鳥の声とよく似ていた。
その鳴き声は遠くなり近くなり。
次第に近づいてくるようだった。
ショウがぼーっと見ている視界に鳥が見えた。
ショウの上をくるくると円を描くように飛んでいる。
何の意味があるんだろう?
時々、鋭い鳴き声を上げる。
自分のことが気になるのか?
縄張りに入ってきた異質な生き物を警戒しているのかもしれないと。
ショウは考えた。
「ごめん、少し休ませてもらう。
起きたら、また進むから」
どっちに進めばいいのかも分からない状況だけれども。
と、ショウは自嘲した。
落ち着けそうなところに体を横たえたせいか。
ショウの体は休みたがった。
それに逆らわず、ショウはそのまま目を閉じた。
すぐに眠りが訪れた。
鳥の鳴き声が空に響いていた。