「今日行く樹がある場所はね。

日帰りできる場所じゃないんだよ。

今日は諦めて。

大丈夫そうだから、もう行くね」

 

サトシは家を出て行った。

ショウもサトシを追って外に出た。

サトシが公共ビークルに乗って行くところだった。

 

ショウは慌てて、また中に戻った。

前日に着ていた服に着替えた。

ビークルに乗ると、サトシが荷物を送っていた場所を指定した。

自分が今持ってきた装備はきっと不足しているはず、とショウは考えた。

サトシが持っていたものを思い出す。

思い出せるだけのものを移動先へ配送するように注文する。

携帯用の食料と飲み物も必要か?

それだけ済ますと、ショウは眠ろうと思った。

睡眠を数時間しか取ってなかった。

昨日の行動でたまった疲労はまだ完全に抜けきってない。

目を閉じるとすぐに眠気が襲ってきた。

 

 

 

ピピピと警告音が鳴った。

到着の合図だった。

ビークルから降りると、サトシの仕事用の荷物がそこに置いてあった。

サトシの姿はない。

ショウが配送を頼んだ荷物も届いていた。

パッケージを開けて、自分のバッグに詰め込んだ。

飲み物も入っているからなのか?

ズシッと重かった。

昨日は食べ物も飲み物もサトシが準備してくれていた。

こんな重いものだったのか、と。

ショウの分も持たせていたことに申し訳無さを覚えた。

 

ここから進む道は一つしかない。

道と言っても、昨日と同じような道なき道。

草をかき分けて行かなくてはならない。

ショウは楽観視していた。

サトシが通った痕があるはずだから、簡単に追っていけると。

 

草を踏んだ痕があった。

ショウはそれを目印にサトシの後を追った。

すぐに息が切れた。

昨日と違って、草は刈られてなかった。

ちょっと踏まれて折れている草があるだけ。

その草もすぐになくなった。

斜面には枯れ葉が積り、樹で日陰になるからなのか?

草は生えてない。

見上げると、サトシが踏んで登っていったからなのか?

所々、枯れ葉がないところがあった。

そこに行って見てみると、足あとが残っていた。

 

それを目印にまた追っていく。

足あとまで登っては、また次の足あとを探して這い登る。

斜面はだんだんと傾斜を増していった。

這いつくばって、手も使って、それでも這い上がることが難しい。

足元が滑って、時間をかけて登った斜面を登った以上に滑り落ちる。

目指していた足あとを見失いそうになることもあった。

 

それでもショウはなんとか追いつこうと必死だった。