ショウは自分が清潔になったと感じられるまで何回か体を洗った。

出たときにはかなりの時間が経っていた。

洗面所に置いてある着替えを着た。

リビングに戻るとサトシは服を作業用の服を着ていた。

もしかして、作業用の服しか持ってきてない?

 

 

「サトシさん、服、貸しましょうか?

それじゃ寝にくくないですか?」

 

見るからに丈夫さと作業効率に特化した服だった。

 

 

「服まで貸してくれるの?ありがとう」

 

ありがとう、とサトシが言う時の顔が素敵だ、と思った。

ショウの服を洗面所から持ってきて渡した。

ショウの服は家の中で過ごすための服。

着心地を重視して選んだ服だった。

 

 

「わぁ〜柔らかいね。

手触りがすごいいい」

 

パパっと作業服を脱ぐと、ショウの服を着た。

ショウはお気に入りの服ばかり買っている。

ほぼどれもデザインは同じ。

Tシャツに柄が入ったポケットが付いているもの。

ポケットの柄が違うだけの同じ製品。

家の中はそれで過ごせるように環境設定してあった。

下も同じような素材でできた、肌触りのよいものだった。

 

 

ほぼ、ショウと同じ服装になったサトシが自分とショウの姿を見比べる。

 

 

「んーやっぱりショウくんの服はショウくんの方が似合うね。

ちょっと大きいみたい」

 

サトシがズボンの裾を折り返しながらショウに言う。

サトシは確かにショウよりもやや小柄だった。

 

気が付くと、かなり遅い時間になっていた。

サトシは時々目を擦っている。

 

 

「先に食事出しておけばよかったですね」

 

「食事は人と一緒の方が美味しく感じるんだよ?」

 

サトシは笑って言った。

ショウは人と食事をしたことがない。

それどころか、人と話したことすら、数えられるほどしかない。

自分の部屋に人を入れることも初めて。

人の部屋に入ったこともない。

何もかも情報と経験が不足している。

この後、どうすればいいのか戸惑っていた。

 

 

「サトシさんは、人の部屋に泊まった経験ありますか?」

 

「うん、あるよ。

泊まりに行ったことも、泊まりにきてもらったことも」