荷物を持って、サトシは川岸から上がってきた。
上着を着たサトシはバッグも持ってきていた。
切り株は一つしかない。
サトシはどうするのかな?と、ショウが見ていると。
サトシはそのまま地面に座り込んだ。
傍らに置いたバッグの中から何かを取り出した。
「弁当食べていい?」
ショウが返事をする前に、サトシは箱の蓋を開けた。
中には食べ物が詰めてあった。
それだけしか口に入れないのか?
と、ショウが不思議に思うほど、サトシの一口は小さかった。
もぐもぐしながら、サトシが合間にショウに話しかける。
「マッチングのことだっけ?
ショウくんのマッチング、もうすぐなの?
気になるよね。
どんなこと、聞きたいの?」
そう聞かれて、聞きたいことが分かってないことに気がついた。
「え・・・と。あの・・・
気持ち・・・悪く・・・なかったですか?」
「気持ち悪い?何が?」
「その・・・他人に・・・触れるのが・・・」
「あぁ・・・そうだね。
最初は・・・・ちょっと、抵抗はあったかな。
でも、すぐに平気になったよ」
「サトシさんのお相手も・・・慣れたみたいでした?」
「そうだね・・・彼女はすごい緊張してた。
1回目は・・・近づいただけで泣かれて話もできなかった。
2回目はちょっとだけ話せたかな。
3回目でガチガチだったけど、なんとか。
すぐ慣れたんだけど・・・彼女はダメだったみたい。
人によって違うのかもね?
ショウくんは?平気そう?」
さっきまでは平気とは思ってなかった。
他人に触れるのは気味悪いと思っていた。
でも、握ったサトシの手は気持ち悪く感じなかった。
触れてしまえば案外、大丈夫なのかもしれない。
「正直・・・・ついさっきまで絶対無理だと思ってました。
今は・・・・なんとかなるのかもしれないと思い始めました」
「ショウくんは人と会うの初めて?」
「はい、初めてです」
「実際その場になってみないと分からないだろうけど・・・
なんとかなるかもね?」
サトシにそう言われて、ショウはマッチングへの抵抗が少し減った。