サトシの言葉にショウは驚いた。
そういうサトシは他人と会った経験があるということ?
「サトシさんは・・初めてじゃないの?」
「うん。マッチングでもあるし・・・ね。他にも何回か」
あぁ、とショウは納得した。
自分にももうすぐやってくるはずの連絡。
マッチングについては、そういう義務があります、としか情報がない。
個人の意見や感想はクラウドから削除されてしまうのか?
マッチングの時期が間近になったショウがいろいろ検索してみても。
検索で上がってくることはなかった。
今のショウにとって、マッチングはとても気になっている事柄だった。
サトシから何かしらのことが聞けるかもしれない、と気がついた。
「あの・・・・マッチングのこと・・・
聞いてもいいですか?」
「その前にさ。聞きたいことあるんだけど。いい?」
自分にはサトシに与えられるような情報はないはずなのに?
ショウが警戒した時、サトシは質問を口にした。
「キミの名前。教えてくれない?」
「あ・・・・ショウ・・です」
「ショウくん・・・ね?ありがと。やっと名前で呼べるよ」
そう言って、サトシは笑った。
ふわん、とその場の雰囲気が柔らかくなったような気がして。
ショウから警戒心と恐怖心がなくなっていく。
サトシが近づいてきても、さきほどまでとは違い。
緊張はさほど感じなかった。
「こっち。
座れるとこがあるから、行こう!」
サトシはいきなりショウの手を取って、引っ張った。
さきほど、握手をあれだけ気味悪いと逃げ出したのに。
いざ、手を握られても、気味悪さは感じなかった。
温かいサトシの手は優しくショウの手を包んでいて。
ショウはこわごわ、握られてる手でサトシの手を握ってみた。
サトシがショウを振り向いて、嬉しそうに笑う。
サトシの手に力が入って、ショウの手を強く握った。
「ここ、座るのにちょうどいいでしょ?」
それは木の切り株だった。
ちょっと椅子にしては小さめではあるが、座れないこともない大きさ。
ショウはそこに腰を下ろした。
椅子よりも低く、切り口が斜めの切り株の座り心地はよくなかった。
それでも、その時のショウはそれすらも楽しむ余裕を持ち始めていた。
ショウから離れたサトシは川岸に降りていった。