僕は嬉しくなって、蒼くんの両手をつかんでぶんぶん振り回した。

くるまってた布団を跳ねのける勢いで。

 

 

いつの間にか、声も出してたみたいで・・・

 

びっくりした狐がドアから顔を出した。

僕たちの様子を見て、嬉しそうに鼻をクンと鳴らして。

大きい口を開けて、喜んでくれた。

 

 

 

 

蒼くんと僕は手をつないだまま、寝間を出た。

狐に連れて行かれたのは、居間らしき部屋だった。

狐の家の居間はおじいちゃんちとも僕のうちとも違ってた。

 

 

そこら辺に置いてあった鉄瓶から大きい急須にお湯を注ぐ。

お茶の香りが立った。

 

 

狐は大きい湯のみを手にした。

ずずず、ってお茶を湯のみからすすって。

僕たちに視線を向けた。

顔を見て、次につないだままの手を見た。

 

 

「紅、もう面は外していいぞ」

 

僕はお面を外した。

蒼くんが僕の顔をジーっと見る。                                                            

あんまり見るから、なんか緊張して恥ずかしくなってくる。

どうしよう?

 

 

狐はまた、ずずっとお茶をすすった。

 

「蒼、帰る気になったのか?」

 

僕の手を握ったままの蒼くんの手に力が入った。

僕の顔に向けられてた視線が、落とされて。

 

蒼くんはなかなか返事をしなかった。

 

頑張れ、って応援の気持ちを伝えたくて。

僕が蒼くんと一緒に帰るんだよ、って思い出して欲しくて。

 

手をギュッと握った。

蒼くんが顔を上げて、僕の顔を見る。

僕は蒼くんと目を合わせて。

頷いた。

 

 

「オイラ・・・オイラ・・ね。

紅くんと・・・帰る。

紅くんがね・・一緒に帰ってくれるって。

帰っても、ともだちでいて、遊びに来てくれるって。

 

だから・・・だからね・・怖くても・・・」

 

だんだん尻すぼみになっていく蒼くんの声。