智くんの手が俺の頬に触れた。

 

「んふふ・・・そんなこと考えてたんだ?

僕が連絡取れなくなっちゃったし。

その・・・すごい何回も求めちゃったし・・で。

翔くん、いろんなこと考えちゃった?

あのね・・僕は恋人としての翔くんに不満はないよ。

僕のこと好きでいて、大事にしてくれるんだもん。

その気持ちをね、ちゃんと僕が分かるように伝えてくれる。

翔くんの愛でいっぱいになるって、そういうこと。

それだけで恋人としては十分だよ」

 

智くんは俺の鼻先にチュっとキスをして。

頬に手をあてたまま、話を続けた。

 

 

「あんなに続けて何回もは・・・正直ね。

体はしんどい。

でも、空っぽのままなのはもっとつらい。

体のしんどさなんて、どうにでもなる。

翔くんだって立て続けに何回もなんて・・・疲れるって分かってるんだけど。

付き合ってくれて、与えてくれて・・すごいね・・嬉しかった。

抱かれてる・・・時間。

すごいしあわせだった。

ちゃんと大事に抱いてくれて。

心が空っぽのままでいるのは・・・

胸を掻き毟ってしまいたくなるほど苦しい。

こんなままで、次に翔くんに会える時までいるなんて耐えられない。

そう思ってたのに。

愛されながら抱かれるとね・・・気持ちまでいっぱいになる。

そんな風にしてくれる恋人にさ。

不満があるわけないよ」

 

智くんはもう一回鼻先にチュッとキスをして。

次に口唇を重ねた。

 

 

「連絡取れなくなっちゃって翔くんのこと不安にさせちゃったよね。

でも・・・ごめん。

また、同じように音楽が降ってきたら・・・

また同じ状況になると思う。

時間も忘れて、降ってくる音楽で体中いっぱいにして。

音を追うことに夢中になって、それを僕の音楽にしたい。

ピアノで表現したい。

僕はさ・・・翔くんのこと、大好きだけど・・・・

その時だけは音楽を・・・ピアノの方を優先すると思う」

 

 

智くんは最後はやけにきっぱりと言い切った。

探してた答えは見つからないまま。

頭の中が真っ白になった気がした。

 

 

「俺・・・・は・・さ。

何よりも・・智くんを優先したいと思ってるけど・・・

智くんは・・・・そうじゃないんだ?

智くんのためなら、大学辞めたって構わないくらいには思ってるよ。

夢中になりたい時でも、俺が連絡したら、返事くらい欲しいって。

思ってちゃダメ?

智くんにとって、俺より音楽が大事なんだね?」

 

「翔くん・・・」

 

智くんの顔が困り顔になった。