智くんが目を逸らして、膝に顔を埋める。

 

 

「智くん、どうしたの?」

 

智くんはしばらく硬直したまま。

返事もなかったんだけど。

 

いきなり・・・

 

 

「翔くんの・・・ばかっ!」

 

俺に飛びついて、首に腕を回してぎゅっとしがみつく。

 

 

「翔くん・・・なんともないの?

僕だけ、その気にさせといて・・・どうしたの?はないでしょ!」

 

なんともなくない。なんとか・・・なったさ。

なったから、智くんをその気にさせようとしてたんじゃん。

俺の首筋に鼻先埋めて、スンスン匂いかぐ様子がなんかの動物みたいで。

智くんの言葉を聞いて、その気になったのか、って理解した。

 

 

「俺に抱かれる時のこと・・・思い出しちゃった?」

 

智くんのその気はそれで勢いが付いたみたいで。

首筋を甘咬みしてくる。

腰を俺に押し付けるように、擦りつけて。

智くんからほわ〜っとミルクの匂いが立ち上ってきた。

この智くんの匂いをかぐと・・・俺も・・・つられて・・・

俺も智くんの耳の後ろあたりの匂いをかいだ。

それからは二人、お互いのその気をぶつけ合うことにした。

 

 

いつの間にか、隣の部屋では二回戦目が始まっていたようだった。

また、ニノの声の通奏低音が聞こえ始めていた。

ニノの声が聞こえてる間、智くんもあられもない声を上げていた。

壁越しに聞かせあってるみたいだった。

一際高い声が上がったかと思うと、しばらく静かになる。

それでも、智くんが声を上げ続けているからなのか?

ニノの声もまた少し時間を置いて、また、聞こえるようになる。

 

どれだけ啼かせられるのか?を競ってるようだった。

 

声が出続けていたのは、智くんの方だけど。

ニノたちは始めが俺らより早かったことだし。

引き分けでいいか?

 

翌日、ニノはかなり腰をかばってたのは・・・

しょうがないことだと思う。

 

 

 

なんてことを、思い出しながら、ぽつりぽつりと話してたら。

 

「んー僕、もう可愛くなくなったよねぇ。

もうすぐ39歳だし・・・んふふ」

 

いい感じに酔っ払った智くんがふにゃふにゃになって、もたれかかってくる。

その手からグラスを保護すると。

安心したのか、もっとぐにゃぐにゃになった。

 

 

あの時の智くんの声はそれまでで一番、可愛かった。

なんていうか・・すごっく・・萌えて、燃えた。

それからも、たびたび可愛い声を聞かせてはくれてるけど。

あの時を越えられることは滅多にない。

やっぱり・・・ニノのあの声がなんらかのエッセンスになったのか。

 

 

あの時と同じようにその気にさせられるかな?

あの時みたいな最高に可愛い声、聞けるかな?

 

ふにゃふにゃでぐにゃぐにゃな智くんに覆いかぶさって。

腰から尻、そして太ももを撫で擦った。

もう智くんもその気、だったのか?

大事なところにも簡単に手が触れた。

 

 

 

END