だんだん、体が不調な日が増えてくる。

不調じゃない日を数えた方が早いくらい。

 

微熱は常に。

調子が悪いと高く上がる。

体が怠いのは、いつも。

怠さだけですんでるなら、まだマシ。

たまに痛みもある。

我慢できないほどの強い痛みってわけじゃない。

でも、どこ、っていう限局された痛みじゃなくって。

体全体がじんわりと痛い。

 

体を動かすことが億劫になっていって。

中庭に出る日も少なくなっていた。

それでも、ホタルの時期には、夜に見に行きたくって。

 

熱があるけど、大したことない、と自分に言い聞かせて。

中庭に出た。

 

ベンチまで歩いていって座ったら、もう動けなくなった。

そこに寝っ転がって、ふわふわと飛びながら点滅する光を眺めた。

 

 

「あぁ・・・綺麗だね。

今年も見られて・・・嬉しいよ。

来年も、また・・・・

きみたちの子どもを見られるといいな」

 

手を天に伸ばした。

すいーっと近づいてきた光が指先に止まった。

 

そのままチカチカと点滅する。

きみの思いが相手に伝わるといいね。

僕も死ぬ時に翔ちゃんに好きって言ってみよう。

そんな生命と引き換えの言葉なら。

僕の気持ちが伝わるかもしれないね。

 

しばらくすると、フッと飛んでいった。

 

 

飛び交う光を見ながら、そのまま眠ってしまったらしい。

翔ちゃんが僕を呼ぶ声で目が覚めた。

 

「智くん?気分が悪くなったの?

今、部屋に連れて行くから」

 

「ううん。違う。ホタルが綺麗だな、って見てて。

その光の中で眠りたかったの」

 

一人きり、暗闇で死んでいくくらいなら。

あの中庭で、ホタルが飛び交う中、死にたい。

 

そしたら、僕もホタルになれるような気がする。

翔くんの胸に止まって、チカチカ光ってやるんだ。

 

 

そんな想像をして、くすくす笑った僕を抱えて、翔ちゃんは部屋に戻った。

ベッドに僕を下ろすと、熱を測ったり、あちこち触って診察してくれる。

 

どうせ、触ってくれるなら、違う触り方してくれればいいのに。

 

 

「ね?翔ちゃん。セックスしよ?」