お風呂に浸かり、セックスで熱くなった体を冷ましつつ。

ぬるい触れ合いを楽しんでいる時だった。

 

 

「胸・・・・くる・・し・・・

しょうちゃ・・・す・・・」

 

胸のあたりをこぶしで押さえたかと思うと、俺の方に振り向いた。

俺の名前を呼んで、今までに見たことない表情で俺を見た。

ピエタの微笑みだ、と思った。

サトシと同じような表情で俺と目を合わせた次の瞬間。

智くんの体から力が抜けてお湯に沈みそうになった。

智くんの意識がなくなった。

声をかけても反応しない。

痛覚刺激にも反応なし。

意識レベル300。

心肺停止状態に陥っていた。

 

抱きかかえて、風呂から上げ、部屋の床に寝かす。

心肺蘇生を行った。

 

 

 

 

「拡張型心筋症の傾向が出ている。

生検をしてないので、はっきりは言えないが・・

今までの病変から考えると、心筋の石灰化も考えられる。

今回は運良く脈が再開したが・・・

また、いつ心拍が停止するか予測不能だ」

 

二宮医師から告げられた。

 

「バチスタ手術は?」

 

「おそらく石灰化が広がっていくだろう。

適応外だ。

というより、拡張したものを縮めるだけの手術では意味は無い。

治療できるとしたら、心臓移植しかない」

 

「分かりました。

では準備が整い次第」

 

 

智くんは蘇生した後、ICUに移された。

呼吸も心拍も再開したが意識は戻らないまま。

そのまま手術することになった。

 

手術の準備のため、スタッフは関係各所に連絡を飛ばしている。

人工心肺の準備、MEの手配、輸血用の血液の手配。

予定されていた手術ではないので、物品の準備にも手間取っている。

サトシから保存しておいた血液の解凍を始めた。

オペのため、二宮医師もスタッフも忙しそうにしている。

 

 

俺は最後の手術をサトシに告げるために部屋を訪ねた。