「サトシ、肺の機能が悪くなっている。

3日後に手術するよ」

 

サトシに告げると、真っ青になった。

わなわなと口唇が震え、泣きそうに目を大きく開いている。

 

 

「もうすぐ・・・学校に行けると思ってたのに・・・

もう、元気になれたと・・思ってたのに」

 

「風邪をひいたら、命取りになりかねない。

学校はしばらく行けない。

休学手続きをしておいたから」

 

それを聞くと、サトシの目から大きな涙のつぶがポロッと零れた。

頬を流れ落ちる涙を俺の服で拭き取るように、顔を擦り付けた。

 

いつの間にか、背が伸びていたのか?

胸元に顔を埋めていたのに、今は肩口に顔を埋めている。

 

 

「サトシ、大きくなったんだね?」

 

「背は・・伸びた・・・でも・・・

翔ちゃんは・・・・僕をまだ子どもだと思ってるんでしょ?

だから・・・何も説明してくれないんでしょ?

僕・・・まだ中学生だけど・・・何もわからない子どもじゃないよ。

病気のことだって、ネットでいろいろ調べられる。

分からない言葉だって、ちゃんと調べられる。

なんで・・・話してくれないの?

僕の体が・・・どうなってるのか?

怖くて・・怖くてたまらない。

寝る時・・次の朝にまた目を覚ますことがあるのか?

いつも不安でしょうがない。

 

人を好きになることだって知ってるんだよ。

それがしあわせなことも、しあわせなことばっかりじゃないことも。

苦しいことも、哀しいこともあるってことも。

 

翔ちゃんが次に会いに来てくれるのは・・いつだろう、って。

いつも考えてる。

翔ちゃん・・僕が言ってる好きはちゃんと翔ちゃんに伝わってる?

僕の好きと同じ好きが返ってきてる気がしない」

 

 

背中に回っているサトシの手が強く俺を抱きしめる。

腕ごと抱きしめられているから、俺はサトシを抱きしめられない。

そうされることを求めていないのか。

 

「離してくれないと、抱きしめることもできないよ?」

 

「翔ちゃんに抱きしめてもらっても・・・

僕の腕と翔ちゃんの腕は意味が違う、気持ちが違うもん。

ね?翔ちゃんは分かってる?」