智くんの発熱が続いている。

一番心配なのは、移植した臓器に対する拒絶反応。

次に臓器が定着せずに、壊死。

あとは・・感染か。

 

理論的には拒絶反応は起こらない。

定着も他人からの臓器移植に比べて、格段に確率はいいはず。

血管造影してみると、肝臓の血流は良好。

血液検査の結果も数値が下がっていることからも、肝臓は機能を始めている。

血糖のコントロールも出来ているから膵臓の機能もいい。

 

創部の感染の可能性は・・・

腫脹も熱感もない。

膿の排出も見られない。

血液検査でも炎症反応は正常範囲。

 

二宮医師も原因は他のところだろう、との見立て。

この先も発熱が続くようなら、抜糸後、検査で多臓器を調べる予定、と。

経過が思わしくないからなのか・・・

二宮医師がしばらく智くんの専属になってくれることになった。

その診察の都合もあり、ICUから移れないでいた。

 

 

「翔ちゃん・・・早く・・僕たちの部屋に戻りたい」

 

ベッドの上に起こして背中を温かいタオルで拭いていた。

手術前にあった引っかき傷はなくなって、綺麗な背中になっていた。

発熱のせいか、食事があまり摂れていないせいか。

一時期ふっくらした体がまた薄くなった。

 

 

「まだ、点滴も続けてるし・・・難しいね」

 

鎖骨下に入れてあるカテーテルはまだ抜けそうもない。

経口摂取で食事と水分が充分に摂れるようになってからじゃないと・・・

 

もしかして、もう、ずっと抜けないままになってしまうのかもしれない。

 

 

「点滴してると、お腹すかないし、喉も渇かないんだよ。

一回、点滴やめてくれないかな?」

 

「二宮先生と相談してみないとなんとも言えない。

もし、点滴なくなったら・・

食事頑張れる?」

 

「翔ちゃんも一緒に食事してくれる?」

 

「もちろん」

 

二宮医師と相談の上、持続点滴は一時中止。

抗生剤の点滴を一日3回だけに減らした。

 

カテーテルはそのまま留置。

ヘパリンロックをしておくこととなった。

 

智くんの食欲が戻ることに期待することにした。