「ヤダっ!行かないで!僕の側にいて!」

 

まだ痛みで体を起こすことなんてできないはずなのに。

必死なのか?

サトシは上半身をひねるように持ち上げて、俺の腰にすがりつく。

点滴のルートが絡まってしまうのが、気になる。

それを直そうとサトシの体を突き放そうとする。

サトシの腕に余計に力が入り・・点滴が落ちなくなった。

 

 

「サトシ・・・落ち着いて。

まだ、しばらくは側にいるから」

 

「しばらくじゃなくて・・・ずっといて!

僕は・・翔ちゃんのなんでしょ!?

翔ちゃん・・僕のものになってよ!」

 

「サトシは俺のだよ。

大事に・・・思ってるから。

大事な・・・大事な体なんだ。

手術したばかりなんだから・・無理しないで。

ほら・・・しがみついてると、キスもできない」

 

サトシは涙いっぱいの顔を上げた。

 

 

「キス・・・してくれるの?」

 

「今はキスしかできないよ?」

 

「うん・・・分かってる」

 

少し落ち着いたのか?

痛そうに顔を歪めた。

 

ストレッチャーの上に元通りに寝かせ、点滴のルートと滴下を確認する。

 

 

「痛みは?痛み止め欲しい?」

 

「まだ・・・大丈夫。

今は・・・翔ちゃんのキスが欲しい」

 

 

サトシは触れるだけのキスでは満足しなかった。

大人のキス、とサトシが強請る。

 

触られると弱い耳に触れながら、キスをした。

トロン、とした目になったサトシを相葉医師に任せた。

 

 

智くんの覚醒に間に合うか?

やはり、サトシのところは後にした方がよかったか?

足早に智くんの元に向かった。