サトシから腎臓を摘出するのに、内視鏡と開腹とどちらを選ぶか?
担当の外科医と話し合った。
内視鏡の方が傷は小さいが、その分、技術的に難しい。
目的は確実に腎臓を摘出することなので、開腹を選択した。
サトシには詳しい説明はしていない。
自分がされる手術をがどんなものなのか?
知らないままに手術されるのは、不安が大きいだろう。
そのせいか、つないだサトシの手は俺の手をしっかりと握っていた。
麻酔がかけられて、意識が落ちる、その瞬間まで。
俺の手をしっかりと握り。
俺がサトシを見つめていることを確認していた。
意識が落ちた後、挿管された。
手術中、生体管理を行う麻酔科医にその場を任せる。
サトシは眠っているときも、目が半開きになる。
眼球が乾かないよう、目蓋をしっかりと閉じ、テープで固定された。
次は智くんの番。
隣の手術室へ向かった。
手術台の上に横たわった智くんは俺にすぐに気付いた。
「翔ちゃん」
まだ、自由の利く手で俺の頬を撫でた。
「智くん、頑張ってきて。
これが終わったら、好きなもの、食べられるようになるから。
また、ラーメン、食べに行こうか?」
「うん・・行きたい。
また、海に行って。
今度はお店で一緒に醤油ラーメン食べてくれる?」
麻酔前にキスを交わした。
緊張のせいか?
前日夜からの絶飲食のせいか?
智くんの口唇は乾いていた。