翌朝、ホテルのチェックアウトを遅らせた。
智くんの求めに応じた結果とはいえ・・・久々に無理をさせた。
ルームサービスなんて洒落たものはこのホテルにはない。
外から出前を取った。
智くんが食べたがったのは、ラーメン。
塩分が多いから、研究所内では食べられないものだった。
「んふふ・・・ラーメン、久しぶり。
翔ちゃんもラーメン久しぶりでしょ?
昔・・・よく食べに行ったよね?」
高校の頃だったろうか。
示し合わせて、学校帰りによくラーメン屋に立ち寄った。
俺は替え玉まで頼むのに、その頃から智くんは小食だったのか?
替え玉を頼むことはなかった。
俺が食べ終わるまでに、待たせてしまうことが常だった。
それでも・・・嫌な顔ひとつせず、食べる俺を嬉しそうに見ていた。
あっさりした醤油ラーメンを智くんはほとんど残すこと無く食べた。
あの頃食べていたラーメン屋のとよく似た味だった。
やはり食欲は食べるものによってかなり左右されるらしい。
現在顕著に機能が落ちているのは腎臓だけ・・・
他の臓器のことを考えると、早急に対処したほうがよさそうだ。
腎機能が回復したら、食事制限はゆるくできる。
昨日、砂浜まで歩いたせいか?
今日は浮腫が軽減しているようだ。
「智くん、脚、痛みとかだるさとか、どう?」
「そういえば・・・今日はちょっとだるいのマシかも。
いつも朝は重苦しい感じが強いんだけど、今日は楽」
ベッドの端に腰掛けて、足踏みするように脚を動かす。
「もう一回海、見ていく?」
「うん、行く。連れてって。
もう少ししたら、寒くなっちゃうから。
もう・・・今年は最後・・だよね」
「また体調がいい日に来ようか?
寒くないように、ブランケットいっぱいもって。
車の中から眺めるのでもいいし」
「うん・・・ね?翔ちゃん。
やっぱり海は今日はもういいから・・・・」
智くんの指先が頬を撫でた。
普段より少しだけ血色のいい口唇にキスをした。
もっと朱みを帯びた口唇が開いた。
「翔ちゃん・・・帰る前に・・・もう一回。セ ッ ク スしよ?」