「お名前は?」
「らん」
「今日はパパたちと一緒に来たのかい」
「ママと・・カズパパとしょうパパとまさきパパと潤くん」
「ママも?・・・ふーん」
職人さんは僕たちを見渡した。
そのまま何も言わずに腕を組む。
らんは泣きそうな顔をして、僕の脚にしがみついた。
ぎゅって服を握ってる。
心細いのかな。
抱き上げると僕の首にしがみついてきた。
「あんたが・・ママ・・かい?」
「はい。そうです」
らんの背中を撫でながら答えた。
じっと僕を見る職人さんの視線に負けないように、僕も見た。
にやっと笑った職人さんは大きく頷いた。
「よし、引き受けた。
3年待ってくれ。
満足のいくもんを作ってみせる。
少し、らんちゃんと話しさせてもらえるかな?
らんちゃんも気に入るものを作りたいからな」
「ありがとうございます!」
僕たちは揃って頭を下げた。
その揃いように職人さんは驚いて・・笑い出した。
「あんたたち、いいグループだな」
笑うとすごい若く見える。
少しすると、ちょっと前のあの緊張感はなんだったのか?
と、思うほど、らんは職人さんに懐いた。
僕の膝に座って、座卓でお絵かきしたり、折り紙で遊んだり。
なんで、こんなものが工房にあるんだろう?
職人さんはらんの描いた絵をじっくり見ていた。
絵の一部を指さして・・・・
「らんちゃん、この色が好きなの?
お着物、この色にするかい?」
「うん!らん、この色がいい!」
らんは顔いっぱいの笑顔を見せて、職人さんに答えていた。
職人さんに特別注文だなんて、最初はびっくりしたけど。
3年後が楽しみになってきた。
職人さんが作ってくれた着物を着て。
きっとらんは最高の笑顔を見せてくれるに違いないから。
END