洗面所には着替えが準備してあった。

濡れた髪からぽたぽたとまだ水が落ちてくる。

Tシャツが濡れないように、肩からタオルをかけたままにした。

 

翔くんに声をかけて、そのままキッチンに入った。

キッチンのカウンター越しに僕の顔を見る。

真面目な顔で観察して・・・しばらくして、フッと顔が緩んだ。

翔くんが微笑んでくれたから、僕も口元が緩んだ。

 

僕が覚悟を決めたことを読み取ってくれたんだろう。

リビングから翔くんがバスルームに移動する。

 

 

「コーヒーでいいよね?」

 

「うん。薄めに淹れといて」

 

 

いつもより心持ち粉は少なく。

僕はカフェオレにして飲もうかな?

牛乳って残ってたっけ?

冷蔵庫を開けると、牛乳の残りは一人分。

パックを出した。

翔くんは牛乳入れるかな?

 

 

ふわっとボディソープとシャンプーと湯気の香りがした。

後ろからその香りが僕を包んだ。

 

 

コーヒーを準備する手を止めた。

コーヒーを飲みながら、話するのかな?

って、思ってたのに。

翔くんは、せっかちだから。

コーヒーまで待てなかったんだね。

 

コーヒーの香りが漂うキッチンで。

僕たちは元通り。

 

 

 

濡れた髪を乾かす暇もなかった。

髪から垂れる水をうっとおしく思ってたけど・・・

 

翔くんとのキスがやめられなかった。

お互いの体をまさぐる手が止められなかった。

直接触れる肌を感じることが止められなかった。

 

 

自分の気持ちをぶつけることを。

翔くんの気持ちを受け取ることを。

 

止められなかった。

 

 

END

 

RAINBOWに続く・・・のかな?