翔くんだって傷つかなかったはずがない。
僕は思いっきり翔くんの手を振り払った。
思いっきり拒絶して、部屋を飛び出した。
寒い時期ではないけど・・・雨の中、僕を探してくれた翔くん。
僕はまだ、僕の気持ちをちゃんと伝えてない。
翔くんが気持ちを伝えてくれたように・・・
僕も気持ちを伝えなきゃいけない、と思う。
翔くんの裸の胸に顔を埋めた。
まともに顔を見て、なんて・・・話せない。
「翔くんの・・・記事を見た。
怖かった。
翔くんが・・・結婚とか・・・したくなったんじゃないか、って。
僕は・・・きっと翔くんのこと、好きすぎるんだと思う。
欲張り・・・なんだよね。
他の誰かに触れた手、って考えたら・・・気持ち悪くなって。
僕は・・・翔くんしか見えない。
僕には・・・翔くんだけ・・だよ。
ごめんね・・・好き・・すぎて」
翔くんの手が僕の髪を梳く。
その手があまりにも気持ちよくて。
翔くんの胸に顔を擦り付けた。
「智くん、俺は何度でも言うよ。
智くんが言葉にして欲しい、って思ったら。
自分の気持ちを智くんに伝えることにためらいはない。
怖いとき、不安なとき、寂しいとき。
俺にすがってよ。
一人で苦しまないで。
智くんの弱音を聞くのが俺以外の誰か、なんて・・・
俺は耐えられないし・・・そいつが許せない」
「何度でも・・・言ってくれる?」
「言うよ。智くんが望むなら」
その夜、僕は何回聞いただろう。
覚えていられないほど、数えきれないほど。
僕も、何回も言った。
激しい行為の中、うわ言みたいに、何回も。
優しくされてる時、確かなものにしようと、何回も。
何回も。
耳の奥に翔くんの声が残ってる。
心の中いっぱいに翔くんの気持ちが埋まってる。
それさえあれば、僕は・・・
僕たちは大丈夫。
二人で虹をくぐって、どこまでも行けるはず。
END