温かいシャワーを浴びて、湿ってしまった服を着替えた。

翔くんがシャワーを浴びてるうちにあったかい飲み物でも準備しとこうって。

キッチンに入った。

 

見慣れないものはない。

そこにあるのは僕が使い慣れてるものばかり。

 

ポットでお湯を沸かす間に、フィルターにコーヒーの粉を入れる。

翔くん、自分じゃインスタントばっかりだから。

僕が前に来た時から粉は減ってない。

 

今度、ちゃんと粉の量を教えとかないと・・・

だから、色のついたお湯を飲むはめになるんだよね。

 

粉を蒸らすために一筋、粉にお湯を注ぐ。

 

プツプツと膨らんでいい香りが部屋に広がった。

 

 

ポタポタとコーヒーポットに落ちていくコーヒー。

特別に焙煎してもらってる、っていう豆だからなのか?

コーヒー特有のアブラが表面に浮いてて。

きれいな虹色になってる。

 

最後のお湯を注いでポットをコンロに戻した。

 

ふわっといい香りをさせた翔くんが僕を後ろから僕を包むように手をついた。

翔くんが来てることに気付いてたけど・・・

 

 

「ごめん。智くんが不安定になってる、とは・・薄々気付いてた。

でも、何か他のことが原因なのかもしれない、って。

自分を誤魔化してた。

知らないなら知らないままでいた方がいいはず、って。

会ったことはある。

でも二人きりで・・・はないから。

俺には・・・智くんだけだよ」

 

 

「ごめんね・・・翔くん。

僕ね・・・ちょっとだけ・・・気持ちが揺らいだ。

翔くんの気持ちが・・・離れていくんじゃないか、って。

やっぱり・・・結婚とか・・・考えるのかな、って。

何があっても、翔くんから離れられない、って分かってるのに。

僕がしっかりしなきゃダメだ、って分かってたのに」

 

翔くんの腕が僕を抱きしめた。

さっきみたいな気持ち悪さは感じなくなってた。