翌日には大学に戻るという日の夜。

翌朝の出発のために、すでに荷物はほぼ片付けられていた。

お別れの宴が開かれて翔と智以外は大広間にいた。

 

あてがわれた部屋に二人きりで戻ったとき。

 

 

「翔くん、ちょっと出かけよう」

 

智に誘われた。

どこへ行こう、とは言われなかったが、翔は行き先の見当は付いていた。

肩を並べて夜の村を二人で歩く。

 

「星・・・綺麗だよね。

帰ったらこんな星空見られないんだろうなぁ」

 

見上げると天の川が頭上に広がっている。

翔にとっては子どもの頃から見慣れた星空だった。

大学のある街では目立つ星しか見られない。

ぽつりぽつりと言葉を交わしながら虫の声の中を歩く。

 

そんなに狭くもない道なのに、歩いていると肩がぶつかる。

縮まっていた二人の距離がより縮まっていく。

何回目かにトンと肩がぶつかった時に指先も触れた。

触れた指先は離れることがなく翔の指はごく自然に智の指と絡まった。

緊張感は全くなく翔の気持ちは穏やかになっていく。

 

調査に来た当日に二人で来た神社に着いた。

 

 

「やっぱり、最後も挨拶しないとね」

 

 

するっと絡んだ指が解かれた。

肩をくっつけ合ったまま村のお宮に参った。

 

 

「帰ったら・・・こんなに一緒にいられなくなるんだね」

 

五色の紐を手に取ったまま智がつぶやいた。

翔にはその声にわずかに寂しさが混じって聞こえた。

紐にかけたままの智の手の上から包むように手を握った。

 

 

「智くん・・・」

 

二人の口唇が重なった。

紐から外した手は相手に回り、星灯りに浮かぶ二人の影が一つになった。

 

 

 

その日の夜、二人は掛け布団の下で手をつないで眠った。