コンコン、とノックの音が聞こえた。
相葉さんは僕から手を離した。
ストン、と椅子に座ったから、僕だけが相葉さんの近くで立ってる・・
っていう・・なんていうか間抜けな感じになった。
ノックの音が消えると同時に松本部長が入って来た。
その途端、相葉さんがもう一度立ち上がった。
あ・・僕の間抜けさが目立たなくなった。
「お待たせいたしました。
遅くなりまして、申し訳ありません」
松本部長が相葉さんに向かって、頭を下げる。
「大野さんに相手していただいてたので、お気になさらないでください。
お約束の時間より、少し早目に伺ったんですから」
ニコニコと相葉さんが応じた。
「大野はたまに気が利かないことがありますから・・・
かえってイライラしたのでは?」
「いえいえ、それもまた、大野さんの魅力ですから」
あ、相葉さんのお相手を部長がしてくれてるうちに書類!
取ってこよう!
「あの・・・僕、書類を持ってきますので・・・
ちょっとだけ席を外させていただきます」
ついでに、飲み物も準備してこよう。
コーヒーはさっき飲んでたしなぁ・・・
カフェの美味しいコーヒー飲んだ後じゃ・・・
うちの社のコーヒーは・・・どうかな?
水とかの方が、さっぱりできていいかも?
書類を片方の脇にはさんで。
水のペットボトルを3本手に持って。
二人を待たせている部屋に戻った。
あ〜ノック・・・できない。
どうしよう・・・かな?
ペットボトルを持ったままの手でドアをどんどん、と叩いた。
どうにかノックしたものの。
ドアが開けられない。
そのままドアの前に立ってたら、松本部長がドアを開けてくれた。
「すいません、ありがとうございます」
部長は僕の手からボトル3本を片手で蓋近くの首のところを持った。
もう片手で、僕の腰を押すようにして、部屋の中に誘導される。
あ〜モテる人って・・・
男の部下に、仕事中に、こんなスマートに接してくれるんだ。