普段少食のサトシも成長期に入ってきたからか?

ファミレスの目新しいメニューだったからか?

今夜はよく食べた。

デザートも食べたい、とチョコケーキを食後に頼んだ。

食べきれるのか?と思ったが、きれいに平らげた。

 

膨らんだお腹を手で撫でながら、サトシがシートベルトを締めた。

 

 

「ちょっと苦しいかも。

ね?明日、おやすみだから・・・ドライブしたい!

海に連れてって!」

 

サトシにねだられて、車を研究所とは反対方向に走らせた。

 

 

駐車場に他の車はなかった。

まだ、春先の夜の海なんて。

よっぽどの物好きじゃないと来ないだろう。

薄い雲がかかった月の光だけが波を照らす。

白く穏やかに足元に砕ける波が砂を削り取っていく。

サトシが波打ち際まで寄っていく。

 

 

「翔ちゃん・・・夜の海って・・・怖いけど・・・綺麗だね」

 

「そうだな。

あんまり近づくんじゃないよ」

 

「うん。翔ちゃん、こっちきて」

 

近づくと、サトシの手が絡められた。

 

 

「んふふ〜かかった!」

 

思い切り良く手を引っ張られた。

そのまま海の方へと向かうサトシの勢いに抵抗できず。

 

足元が波をかぶった。

冷たい海水が靴に染みこんでくる。

 

 

「翔ちゃん!」

 

飛びついたサトシが俺のことを押し倒す。

波に全身が洗われる。

冷たさに体がすくむ・・・・その前に。

サトシの言葉ですくんだ。

 

 

「翔ちゃん。好きなの。僕だけ・・・・見て」

 

 

口唇が塞がれて・・・俺は返事をさせてもらえなかった。