サトシが中学に入学した。

制服が変わっただけで、かなり大人っぽく見える。

 

 

「入学祝いに外に食事でも行くか?」

 

フレンチか?イタリアンか?和食か?中華もいいか?

いくつか店をピックアップしてサトシに選ばせた。

サトシはその全てを却下して、ファミレスに行きたがった。

なんでもあるんだって!と目をキラキラさせていた。

 

サトシを助手席に座らせてシートベルトを締めてあげようと手を伸ばした。

 

「翔ちゃん、僕、もう自分でできるよ。

子どもじゃないんだから」

 

サトシの方に身を乗り出した俺の首に腕を回して口唇を合わせてきた。

はぁ、と、ためた吐息と一緒に口唇を離された。

サトシが憂いの交じる表情を一瞬だけ見せて・・・

次の瞬間には、いつもの子供っぽさの残る顔になった。

 

 

「僕、お腹へった!早く行こうよ!」

 

ファミレスは久しぶりだった。

学生時代には友人とよく来た。

食事するだけでなく、ドリンクバーだけで何時間も居座って試験勉強したり。

店には迷惑だったと、今になって思う。

 

サトシはメニューを隅から隅まで見ている。

智くんとはあまりファミレスに来たことはなかった。

二人でいたら、どちらかの部屋にいることが多かったから。

 

 

「これにする!」

 

サトシがファミレスの名物メニューを選んだ。

サラダとスープとパンのセットとドリンクバーも頼む。

 

 

 

「入学おめでとう」

 

乾杯はメロンソーダだった。