それからというもの。

サトシから幼さがどんどん消えていった。

無邪気に笑うことが減り、ともだちと遊びに行きたいと強請ることも減り。

学校から、まっすぐ帰ってくると、俺と触れ合うことを望む。

 

精神的にはかなり成熟してきたのだろう。

サトシはネットで得た知識は豊富だった。

キスだけでなく、それより先の進んだ体の触れ合いまで欲しがった。

 

それでも、身体的にはまだまだ子どもだった。

その先をお互いに無理なくできるようになるのは、数年は先だろう。

 

あの日、俺が惑わされたのを、サトシは気付いていた。

その数年をサトシはすっ飛ばそうとする。

 

今のところは拒んでいるが・・・いつまでそれが続けられるだろう?

 

 

 

「翔ちゃん?」

 

智くんの声が俺を思考から引き戻した。

朝食のあと、智くんはスケッチブックに向かい合っていた。

雨が窓にあたって流れ落ちる様子をスケッチしていたようだった。

 

 

「この頃・・・翔ちゃん、なんか、考え事が多いね?」

 

「そう・・かな?」

 

「そうだよ。なんか・・・心配事でもある?」

 

「心配事なら山ほど。

智くんがこのまま小康状態で続くように何をしたらいいのか?とか。

今よりも状態を良くするために何ができるだろう?とか。

そのために新たに始めた重要なプロジェクトのこととか。

同じような症例はないのか?とか。

考えることも、調べることも山ほどある」

 

「僕のこと?・・・・だけ?」

 

「・・・・智くんのことだけ・・・・だよ。

智くんは俺のものだからね・・・大事にしないといけないから」

 

 

智くんの指が俺の頬を撫でた。

智くんの口唇に触れた。

智くんとキスをするのは・・・・久しぶりかもしれない。

 

 

「ん。僕は・・・翔ちゃんのもの。

ね・・・?雨・・見ながら、セ ッ ク ス し よ?

カーテン・・開けたままで・・・さ」

 

 

二人で外を見ながらつ な が っ た。

後ろ手に回された智くんの腕が俺の首に回る。

仰 け 反 っ た 背 中 にうっすらと汗が滲んだ。

 

何回も何回も、求められた。

夕方になっても、離してもらえず。

その日はサトシの部屋に行けなかった。