案の定、サトシは風邪をひいた。

くしゃみと鼻汁から始まって、悪寒発熱。

アイスノンを欲しがるのは智くんと同じ。

 

俺が風邪をひいたサトシの世話をするのは・・・

智くんにうつしてしまう可能性がある。

サトシの風邪がよくなるまで、部屋に近づかないことにする。

担当の看護師に世話を頼んだ。

 

 

考えてみれば、今まで風邪もひかずに過ごせていたことが不思議だ。

たいていの子どもは集団生活の中で感染症にかかる。

保育園に入ったばかりの子は、風邪や胃腸炎にかかる。

サトシにはそれがなかった。

 

智くんも体は丈夫だった。

病気で学校を休むことはほとんどなかったと思う。

俺が休んだときには、連絡帳や手紙を預かって持ってきてくれた。

お見舞いに来たと言って、熱がある俺の部屋でおやつを食べたり。

宿題をしていったりしていたのに・・・

その後、風邪をひいた、ってこともなかった。

俺が智くんのお見舞いに行ったことはない。

怪我したときに、行った程度だ。

 

 

智くんが、とりとめのない考え事をしていた俺の髪を引っ張る。

 

「どうしたの?ぼーっとして。

なんか・・・心配事?」

 

「あぁ・・・うん・・・ちょっと・・大事な・・・・子・・・

研究対象が・・・病気になっちゃって」

 

「心配なんだね?翔ちゃん、自分で診ないの?」

 

「多分、風邪だから。

智くんにうつったら困るでしょ」

 

「その子より、僕の方が大事?」

 

「もちろん」

 

智くんはんふふ、って嬉しそうに笑った。

 

 

 

 

「ねぇ・・・翔ちゃん。

僕は翔ちゃんのものだよね?

大事にしてくれる?ずっと・・・これからも?」

 

「もちろん」

 

 

頬を撫でる手にキスを誘われた。