サトシが学校で2分の1成人式をする、と言ってきた。
そのために自分の歴史を調べるという宿題が出た。
サトシの発育発達は研究材料にもなるから、写真もデータも充分にある。
フォーマットが決められていて、テーマに沿った写真を貼ったり。
作文を書いたりするらしい。
「なんで、僕はお出かけどこにもしたことないの!?
翔ちゃんとお出かけしたかった!」
お出かけして一番楽しかった思い出
そんなテーマがあった。
小学校に通うようになるまで、サトシは研究所の外に出たことがなかった。
今でも、学校には車での送迎付き。
サトシは涙を浮かべて、俺に食って掛かった。
「海・・・にでも行くか?」
週末に二人で海に行くことにした。
車の助手席に乗るのは初めてだろう。
前の視界が広がっているのを、ワクワクした顔で眺めている。
フロントに身を乗り出すようにして、周りを見ている。
海沿いの道に入ると、歓声を上げる。
渡してあるデジカメで何枚も写真を撮っていた。
智くんと何回か来た駐車場に車を駐めた。
まだ、海水浴には早い。
それでも、気の早い人はいるもので・・・
水着姿で泳ぐ姿もあった。
「水着持ってくればよかった!
そしたら泳げたのに!」
「まだ寒いから風邪ひく」
「そしたら学校休める!
翔ちゃんに看病してもらうんだ!」
サトシはシャツを脱いで、海に駆けていった。