サトシは3歳になった。
発育は順調だった。
身長体重はやはり−2SDと小さめだったが、成長曲線に沿っている。
運動神経はよく、目安の年齢よりも早くなんでも出来るようになった。
階段の昇り降りが一人で出来るようになるのも。
小走りできるようになるのも。
ジャンプできるようになるのも。
智くんも運動神経がよかった。
毎年、必ずリレーの選手に選ばれていた。
知能の発達は年齢相応。
あまり自分から話すことはないが、3語文も出ている。
気になると、どうして?なんで?と、答えを求めてくる。
自分の意志が言葉で表せるようになったからか?
イヤイヤばかりだった時期は終わった。
その分、要求は増えた。
言葉が増え、大分構音も整ってきたが、“翔先生”とは呼べなかった。
サトシは俺のことを“そーちゃん”と呼ぶようになった。
呼び方まで智くんと同じになるのか?
生育環境が違っても、遺伝子が同じだと、同じように育つのか?
外で育つ子どもが幼稚園に通う歳になった。
この先、同じ年頃の子どもたちとの集団生活を経験させるべきなのか?
考えた末。
昼間は研究所に設置されている職員専用の保育所に通わせることにした。
0歳児から就学前までの子どもが30人ほど通っている。
初めて連れていった日は俺の服を握りしめて、離れようとしなかった。
保育士が何人もいて、サトシを遊びに誘ってくれた。
保育所の子どもたちが遊んでいる様子をジッと観察しているのか?
それでも、離れなかった。
どんなことをするのか、納得しないとサトシは離れないかもしれない。
次の日は保育所の各部屋を回った。
0歳児の部屋はベビーベッドがたくさん置いてある。
その中を抱っこして覗かせる。
自分よりも幼い存在を初めてみたサトシは興味津津だった。
じーっと赤ん坊の様子を見ている。
ベビーべッドの横に椅子を持ってきて、よじ登り、見ていた。
1歳児と2歳児は同じ部屋。
まだ歩くことがたどたどしい子どもがいて、部屋の中で遊んでいた。
3歳児と4歳児も同じ部屋。
部屋は広くなり、体を使って遊べるように、大型の室内アスレチックがある。
興味を持ったのか?
俺から離れて登って降り、戻ってくる。
何回か繰り返した。
5歳児は入学のための導入に入っている。
テーブルの前に座って、作業をしている。
折り紙を切ったり、貼ったりして、貼り絵をしているようだった。
字の練習をしている子もいる。
保育所は年齢で分けられていても、子どもの自主性も尊重している。
体を使って遊びたい子は室内アスレチックのある部屋に行ってもいい。
工作をしたければ、大きい子の部屋で遊んでもいい。